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2015年10月04日23:10

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「棟方志功 萬鉄五郎に首ったけ」 @茅ヶ崎市立美術館

これは特殊な美術展でもあるけれど、日本美術史に残しておきたいあるできごとをたどり、
研究者達が世間に広く知らしめようとした、史実の展示ともいえる。
しかも、とびっきりの芸術作品を鑑賞できる、というお得な美術展。

昭和の偉人であり国際的に認められ、たとえばサンパウロやヴェネツィアビエンナーレで大賞を受賞した
板画家棟方志功。
絵の上手な青年が、ゴッホに憧れて洋画家を目指していたのが、浮世絵や版画の美しさにめざめ、版画に転向
というのが、一般的な事実として知られてきた。
それは正しいのだけれど、実は、棟方が洋画を離れたその直接的な理由が

萬鉄五郎

この人は41歳の若さで夭折し、同時期の梅原隆三郎や安井曽太郎らに比べて知名度が低いけれど
恵まれた家で育ち、今の芸大に進み、その頃の才能は大したものであった。

そんな彼は、棟方と会ったことはないし、20歳近く年上というのに、萬作品には、後に志功が用いたのと似たような色づかいや題材が好まれた。
それを萬の遺作展で初めて、棟方志功が気付いたのではないか・・・

棟方はたくさんの文章をものしているが、その一文に、自分がいかに萬鉄を好きか、まさに「首ったけ」である、と書いている。
その原稿が、棟方志功の研究家であり志功の初孫でもある石井頼子学芸員によって発見された。
たとえば棟方が様々な苦労のうちに、やっとの思いで一枚だけ萬鉄五郎の絵を入手することができた
そのいきさつを、文章として展示してあるのが、美術展では異例かもしれないが、おもしろい。

いかに棟方が萬をレスペクトしたかというと、模倣するような洋画集を出したり、
作品の中に、あたかも萬の作品を敬愛するようなものがあったり、
二人の芸術家を対比させながら、それぞれを愛してやまない学芸員たちの想いのこもった展示となっている。

棟方といえば、あの「釈迦十大弟子」の、少し変わった展示のしかたや、「善知鳥」、
国立近代美術館蔵の大作などなど、棟方ファンには嬉しい作品が数多くあるほか、
デザイナーとしての才能を世間に知らしめた谷崎潤一郎の単行本の装幀や挿絵
また、個人あての貴重な年賀状や絵手紙などの、額にはおさまらない珍しい作品も多く、
さらには、文章を書くのが得意だった棟方の直筆の原稿も、数多く展示してあり、大変見ごたえがある。

茅ヶ崎といえばサザンオールスターズ、としか結び付けられない世代の人達にも
これは見逃せないです、と声を高くして教えてあげたい、素晴らしい展覧会だ。

11月3日まで。

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