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2015年06月12日23:13

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「還暦シェアハウス」 泉麻人著

おじさん世代向け、ラノベ。
ライトノベルって若者を対象としていると思っていたけれど、こういうの新しいジャンルになるのかも。

著者は、小説家ではない、と一般的に理解されていると思う。
紹介文に、よく書かれているのは、コラムニスト。
したがってか、本人の希望なのだろうけれど、小説なのに縦二段組みという、おもしろい作りになっている。
しかも短いし。

そんな構成で、いきなり泌尿器科の待合室で主人公松木利夫が呼ばれるシーン。
つまり、きれいじゃない情景とか行動もあり、女性の読者がドン引きするような箇所も少なくない。
でも結末を見極めたい、と読んでしまった。

松木以外に登場するのは、ワケありシングルのおじさん達だ。
タイトル通り、東京郊外の洋館でシェアハウス生活をしていく中に、入ってきたり去って行ったりする女性。
恋愛もの、という要素も、少しはある。
が、決して恋愛小説の範疇には入らないだろう。

主なメンバーは4人だし、その周囲には3,4人の助演者たちがいて、少し群像劇風でもある。
が、ストーリー展開よりも、むしろ流行や風俗に敏感な作者の、時折投げてくるこだわりを持ちスパイシーな小物たちに、
中高年読者たちは、ものすごい懐かしさと共感を感じるのではないだろうか。
例えば、さらっと出てくる固有名詞には;
ユーミンと湘南ドライブの組み合わせ、ディスコでの「ゲットレディー」の踊り方、さらには「やかまし村の春、夏、秋、冬」などなど。

本当にちょっと触れているだけなのだが、その当時を知っている人は、この軽い小説の中から
自分の思い出を取り出すことができるから、お好みで奥深く読み込める。

直球で中高年をターゲットとした、ある意味、鮮やかな小説手法かもしれない。

蛇足ながら、昭和の懐かしいモノとして登場する、あの珍獣。
ツ で始まる、あれが、とっても良い味を出して、冒険談に舵を取らせるところが、絶妙だ。
ほわん、だらーーン、という感じの著者だけど、時折鋭い視点で広げて見せる
ディテールの書き方は、さすがでした。

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