今年の本屋大賞受賞作でもあり、国際アンデルセン賞作家の長編、つまり話題作。
おもしろかったけれど、決して読みやすくはなかった。
ナルニア国シリーズ大好きだった私なのに、もしかしたらファンタジー長編は苦手なのかも、と思わされた。
上橋ワールド炸裂の、産業革命以前の空想の国の話。
(ただし、顕微鏡だけは存在する!これは大切)
主人公は、マッチョ系の中年男ヴァンと、冷遇されている理系の貴人で若者のホッサルという医師。
まずは奴隷として岩塩の採掘場に囚われていたヴァンが、野犬の襲撃を利用して逃亡するところから始まる。
この野犬或いはオオカミの群れは、病原菌をもたらし、咬まれた人間は数日以内に死んでしまう。
これで国中は大騒ぎになるのだが、この大国が征服した国の人々は、死には至らず生き延びられる。
その辺りから、上は国王から下は忍び風の者たちまで巻き込んで、民族間の争いばかりでなく、
人対病気の争いになるところが、この物語をより一層大きく、個性的にしている。
こんな感じで、全体的にアクション満載のスリリングな冒険ものがたりなのだが、
時代背景というか場所の設定が複雑で、国対国、或いは民族対民族の、表には出ないような争いをベースに
思惑や信念によって活躍するキャラたちが、あっちこっちに行ってしまい、ムズカシイ。
さらには、紅組白組みたいな簡単な分け方ができず、しばらく休んでいたキャラが、華々しく戻ってきて
みたいな展開に、ついて行けない箇所も、恥ずかしながら数か所あった。
アガサ・クリスティー以上の登場人物の多さに、目次の後の人物リストを何度も見る羽目になった。
そこは上橋作品だから、すべてのキャラクターたちの個性が、きっちり書き分けられていて、魅力的ではある。
しかも老若男女さらには可愛らしい幼女、プラス賢い獣たちまで登場して、より奥行きが深くなっている。
にもかかわらず、残念ながら、私が思い入れられるようなキャラが皆無だった。
なぜなのだろう?と自問してみる・・・
ということで、アップアップしながら読み終わりました。
面白かったけれど、私には例えば「ローワン」シリーズ(エミリー・ロッダ著)の方が面白かったなぁ。
ローワンがかわいくて。
あまり複雑なファンタジーについていけない、というのは、私の脳がかなり老化したからか・・・
だとしたら、マズイ。
今思い出したけれど、あんなに大好評の「守り人」シリーズは、なぜか私は苦手で、正直困っていたところ
「獣の奏者エリン」が出版されて、こちらは好きになり、ホッとしたのだった。
学校にしろ公共図書館にしろ、図書館関係者が、上橋菜穂子文豪が苦手というのでは、仕事していけない
そんなところが日本の現状だと感じる。
もちろん、私は好きですよぉ。(特に「エリン」第一作の、あるシーンは、もう最高に好きです。)
つまりは、期待しすぎたのに、私は複雑さに負けた、ということだったのかも。
一気に読んで、さらには二度目をすぐ読めば、もっとずっと楽しめるのかもしれません。
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