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2015年06月02日12:25

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「鹿の王」 上橋菜穂子著

今年の本屋大賞受賞作でもあり、国際アンデルセン賞作家の長編、つまり話題作。
おもしろかったけれど、決して読みやすくはなかった。
ナルニア国シリーズ大好きだった私なのに、もしかしたらファンタジー長編は苦手なのかも、と思わされた。

上橋ワールド炸裂の、産業革命以前の空想の国の話。
(ただし、顕微鏡だけは存在する!これは大切)
主人公は、マッチョ系の中年男ヴァンと、冷遇されている理系の貴人で若者のホッサルという医師。
まずは奴隷として岩塩の採掘場に囚われていたヴァンが、野犬の襲撃を利用して逃亡するところから始まる。
この野犬或いはオオカミの群れは、病原菌をもたらし、咬まれた人間は数日以内に死んでしまう。
これで国中は大騒ぎになるのだが、この大国が征服した国の人々は、死には至らず生き延びられる。
その辺りから、上は国王から下は忍び風の者たちまで巻き込んで、民族間の争いばかりでなく、
人対病気の争いになるところが、この物語をより一層大きく、個性的にしている。

こんな感じで、全体的にアクション満載のスリリングな冒険ものがたりなのだが、
時代背景というか場所の設定が複雑で、国対国、或いは民族対民族の、表には出ないような争いをベースに
思惑や信念によって活躍するキャラたちが、あっちこっちに行ってしまい、ムズカシイ。
さらには、紅組白組みたいな簡単な分け方ができず、しばらく休んでいたキャラが、華々しく戻ってきて
みたいな展開に、ついて行けない箇所も、恥ずかしながら数か所あった。
アガサ・クリスティー以上の登場人物の多さに、目次の後の人物リストを何度も見る羽目になった。

そこは上橋作品だから、すべてのキャラクターたちの個性が、きっちり書き分けられていて、魅力的ではある。
しかも老若男女さらには可愛らしい幼女、プラス賢い獣たちまで登場して、より奥行きが深くなっている。

にもかかわらず、残念ながら、私が思い入れられるようなキャラが皆無だった。
なぜなのだろう?と自問してみる・・・

ということで、アップアップしながら読み終わりました。
面白かったけれど、私には例えば「ローワン」シリーズ(エミリー・ロッダ著)の方が面白かったなぁ。
ローワンがかわいくて。

あまり複雑なファンタジーについていけない、というのは、私の脳がかなり老化したからか・・・
だとしたら、マズイ。
今思い出したけれど、あんなに大好評の「守り人」シリーズは、なぜか私は苦手で、正直困っていたところ
「獣の奏者エリン」が出版されて、こちらは好きになり、ホッとしたのだった。
学校にしろ公共図書館にしろ、図書館関係者が、上橋菜穂子文豪が苦手というのでは、仕事していけない
そんなところが日本の現状だと感じる。
もちろん、私は好きですよぉ。(特に「エリン」第一作の、あるシーンは、もう最高に好きです。)

つまりは、期待しすぎたのに、私は複雑さに負けた、ということだったのかも。
一気に読んで、さらには二度目をすぐ読めば、もっとずっと楽しめるのかもしれません。
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