mixiユーザー(id:7990741)

2015年05月09日14:20

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「静かな大地」 池澤夏樹著

友だちに勧められて、このGWにゆっくり読もうと、図書館でリクエストしたらビックリ。やたら重い、かなりの大作。

とはいっても、この作家は何冊か読んでいるし好きだから、とても読みやすかった。
明治初期の北海道日高地方のアイヌを敬愛した和人兄弟と、彼らをめぐる人々の物語。
友情と開拓精神と差別や過酷な運命などなど、長編の要素満載で、読み応えがあった。

淡路から集団で移住してきた下級侍の家族たちの中に、主人公三郎と、弟志郎がいた。
彼らはアイヌのオシアンクル(五郎)と子供のころから知り合い、やがて彼を通じて他のアイヌたちとも親しくなっていく。

成長した三郎は卓越したリーダーシップと聡明さでもって、多くの人々を束ねて、
払下げの土地で牧場を営むようになるが、獣や畑作(米以外の)を扱うのに長けているアイヌを
重用したため、周囲の和人に嫉妬されるようになる。
牧場では馬を育て、それが大成功したものだから、金儲けを狙う内地の人間にまで目をつけられ・・・・

ということで、昔読んだ「コタンの口笛」を連想させるような、差別されるアイヌ対和人という、
当時の北海道の典型的な図式が描かれて、物語に不安なスパイスをたっぷりかけ続ける。
こういう味が好みな人には、たまらない秀作だ。
話の展開もとても面白いし、とにかく登場人物が生き生きと動き、ぐんぐん引きこまれる。

章により「私」を代えて、三郎や志郎らの視点で語られるので、たまに読みにくい箇所もあった。
でも、アンチ不公平というか、公正であることが、たいそう難しかった頃に、
「アイヌに同情してこの牧場を始めたのではな」く、「この天地には理(ことわり)というものがあり、人はそれに合わせて生きるべきだ」という主義を貫いて生きた、一人の男の勇姿が、
北海道の荒々しい自然の中で、丁寧に描かれていて、哀しい所も多々あるけれど、おもしろかった。

またまた私の持論: 男の友情を描かせるならば、池澤夏樹

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