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2015年04月26日23:02

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「木洩れ日に泳ぐ魚」 恩田陸著(文春文庫)

この作家の「夜のピクニック」はあまり好みではなかったけれど、ぱっと開いてみて、スカスカの文体で、
さっさと読み進めそうだったので、図書館で借りることにした。

確かに、どんどんページが進んでいった。
ただし、それは短文だから、行替えが多いからだけでなく、
単におもしろいから、でもあった。

まるで舞台劇のように展開していく物語。
引っ越し前の片付けが終ったアパートの一室で、同居していた若い男女が、最後の夕食を共にしようとしている。
一章ごとに、男の視点、女の視点と入れ替わり、会話と、各自の胸の内とが綴られていく。

そんな中で、彼らが普通の同棲カップルではないし、過去に一緒にトレッキングに行った山で、何か悪いことがおこった、という事実が、だんだんと明かされていく。
その、まだるっこしいストーリーを追っていく上で、ワクワク感というかドキドキ感がある。
そして、重要なキーとなっているのが、あのユーミンの

「真珠のピアス」

数ある松任谷由実の曲の中でも、傑作として名高いアルバムのタイトル曲を、
この小説で、主人公たちを通して作者が解説しているのだが、
それが女主人公の心を、巧みに描くポイントになっていて、とてもおもしろい。
決してストレートに語られない、主人公たちの過去を、
小出しに明かされていく事実から、推理していくことが、楽しい。

事件のような事故のような死が、最初の方で影を落としていることからも、
これはもしかしたら推理小説?という期待さえ抱かせる、
中身の濃い、でもスッキリしたい人には向かないような、ドロドロ系の物語だった。
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