実力派作家の、面白い小説。
今年はカズオ・イシグロがノーベル文学賞受賞となったが、
「わたしを離さないで」を少し連想させるような問題がテーマの長編だ。
物語は、幼児を連れた夫婦達が毎年集まる「夏のキャンプ」から始まる。
その幼い子供達が成長して、本編が綴られるのだが、
そのキャンプが何故終わってしまったか、
7人の主人公達が探してゆくプロセスが、よくできている。
キャンプはバブル時代に開かれたのだが、20年以上たった今、
主人公達は首都圏の別々な場所で、お互いを忘れたように、
会うこともなく生活を送っている。
そのうち2人の女性がアーティストで、歌やイラストを発表していたこともあり
他の者達から探し出され、さらに別のメンバーともつながり、
大人になった夏のキャンプの仲間は
自分達の出生の秘密を明かしたいと、集うことになったのだった・・
当たり前のありきたりな家族ーー
そんなごく普通を築き上げることの大切さを
この作者は強く巧みに示してみせて、
みごとな長編物語だった。
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