国立市を舞台にしたタイトル作を始め、
JR中央線の国分寺や武蔵小金井の辺りを巡る、アラ環男性達の短編7つ。
定年を迎えるようなお年頃のオヤジ達の、何というか、胸キュン物語ばかり。
と表現するそばから我ながら笑える。
おじさんが胸キュン??
ま、そんな甘いお話ではないのだけど。
「たまらん坂」では、
昭和時代に国立市に住んでいたロックスター忌野清志郎の曲
「多摩蘭坂」を絡めて、主人公は坂の名称の由来を探し求める。
そして第二作目からも、それぞれの主人公が地元を歩き回るのだが、
過去に思いを寄せていた娘や現在の謎めいた女性など
少し彩りが加わってくる。
だが、恋愛小説とは言えなくて、不完全燃焼感が半端ない。
それこそが定年間近の男性のリアル、なのかも。
中でも「けやき通り」は作者を投影したようなライターの主人公が、
謎めいた女性に出会う話で、猫たちがキーとなっている。
親猫の名前が<シッポ>。
私の母も、エサを食べにくる野良猫を、その名前で呼んでいた。
猫のネーミングのセンスが同じ。しかも手抜きな感じが強くする。
ということで、「けやき通り」は面白いと思った。
たまたま国立に行く用事があって、車で多摩蘭坂を国分寺側から下った。
すぐに終わってしまって、とても呆気なかったが、
たまらん坂、と平仮名表記の広告板を見つけて大いに満足した。
国立に行くのは楽しい。
が、今回は、古くからの洋書店が先月末で閉店したのを知り、とても残念だった。
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