1950年代終わりから60年代のハーレムを舞台にした
アフリカ系男性の奮闘記。
前半は、時に冗長にも感じたが、ラストに向けてハラハラして
ニューヨークという大都会を駆け巡るスリルもあり、
とてもおもしろかったし、またNYに行きたくなった。
父親は小悪人だったが、苦学して大学まで出た、
ハーレム育ちのレイモンドは、家具屋を営んでいる。
妻のエリザベスは、同じくアフリカ系だけれど、
その親は富裕層を自認している。
レイには、どうしようもない、服役経験のある従弟フレディがいて、
何かと世話を焼いているのだが、そのフレディがトラブルに巻き込まれる。
そして流血を伴う展開になった際に、
荒仕事が大得意で、人を竦み上がらせるような目つきをするペッパーと知り合う。
そしてフレディが親しくなった、麻薬中毒の白人ライナスが、実は…
ラストに向け、とんでもない大物に狙われることになった時、
レイモンドがどうなるのか、ページをめくる手が止まらなくなるのだが、
その舞台がローワーマンハッタンにまで広がり、
あの、今世紀初め倒壊してしまったWTCビルが、
まさにこれから建設されるという
そんな景色を、読者は目の前に思い浮かべながら、読み終わる。
ネタばれになるけど、
半端者というか、トラブルメーカーのフレディが、
なぜか知り合ったライナスは、実は大富豪の長男。
しかし跡継ぎの重圧と、おそらく両親の不仲に押し潰され、
身を落としきった時点で、こちらも箸にも棒にもかからぬアフリカ系フレディと
大変昵懇な仲になる、ということで、
このライナスの持ち物や実家の様子から、
例えば、アメリカの人気ドラマ「ER」に出てくる富豪の息子、
ジョン⋅カーター医師とその従弟を連想してしまったーー「ER」はシカゴが舞台だけれど。
とにかくニューヨークというのは、魔性の街でもあり、
魅力的な人々を排出する、懐の深い大都会なのだと再確認させられる、
改めてNYの大きさに浸った一冊。
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