mixiユーザー(id:7990741)

2024年01月07日17:16

21 view

「いい子のあくび」高瀬隼子著

芥川賞受賞後の第一作、とても面白かった。
終始ざらっとした感覚の話なのだけれど、
各所に散りばめられた尖った欠片を
たどりながらも読み進んで、一気読み。

主人公の直子は大卒後営業職についているが、
職場は決して居心地が良いわけではない。
同い年の大地とは、東京郊外のマンションに
週末にはお泊まりする関係だ。

ただ、冒頭いきなり
「ぶつかったる」から始まるように、
直子には裏と表があり、読者は彼女の、
キツイ性格とだけでは表されない言動に、はらはらさせられる。
しかも表面上は、 いい人 として通っているのだ。

ちょっと"サイコ"な直子は、自分は割が合っていない人生を強いられているからと、
帳尻を合わせるような行動を取り始める。
それが冒頭の一文として始まるのだが……

恐〜い、と笑えるようなシーンが出てきて、
そんな所でも直子を理解できてしまうところが、我ながらコワイ、かも。

多分大柄な体格に生まれついた人、
特に男性には、決して理解できないような事象。
私にはわかる。それが、ちょっと恐ろしい。

こんな生きづらさを抱えた若者が、都会には少なからずいるのだろうか。
また、直子はコンクリートの隙間の雑草を見て、
「東京のくせに、と腹立たしくなる」
こんな所にも彼女の怒りが向けられる。

地方出身で一人暮らしを頑張ってきた若者の
心情を細やかに、しかもスリリングに描ききっていて、引き込まれた。

なお、後ろに短編2編も収録されていて、
そちらもとても面白かった。
が、男性には共感できないかもしれない。

ただ、若手女性を部下に持つような面々ーー特に昭和世代オヤジには
かなり参考になりそう、いや、参考にしてほしい一冊だった。



2 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2024年01月>
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031