「スワン」で直木賞候補になった作家の書き下ろし。かなり面白かった。
東京の底辺で一人暮らしの河辺。
そこへ故郷の村でかつて五人組の仲間だった男の伝言だと電話がかかってくる。
訳ありアラカン男の、故郷に置いてきた過去の忌まわしい事件と
現在の不審死が交錯して、たいそう荒っぽい宝探しが始まる。
栄光の五人組として仲の良かったはずなのに、
不幸な出来事などにより、バラバラに別れた河辺達。
少しずつ彼らの過去が明らかになるに連れ、
不幸の嵐に巻き込まれた少女らの半生までもが浮き彫りにされて、
やるせなさとか憤りとか、登場人物たちのどん詰まりな人生に引き込まれていく。
永井荷風や中原中也ら文学の香りと
東京の場末の猥雑な商売人やカタギでない人々の暴力とが、
みごとにブレンドされた独特な展開を楽しめた。
決して痛快活劇とは、言えないけどね。
ログインしてコメントを確認・投稿する