とても面白い中短編3つ。どれもほぼ一気読みに入り込んだ。
表題作は、三十代半ばの独身女性が、岐阜から東京都下の実家まで、
初対面の強面の男と田舎のポルシェこと軽トラで往復する、ロードノベル。
台風の上陸予報もあり、不穏な雰囲気の中、次々にトラブルに見舞われる。
二人とも相当な苦労人という事実が次第に明らかになっていくのだが、
強烈とも言えるような彼らの過去が、とても淡々と語られていて、
作者の上手さが何とも心地よくずんずん読めた。
二作目は定年を過ぎた男二人が、20年もののボルボで北海道ドライブをするのだが、
ここにも強烈な展開が…
三作目は、古希を迎えたメリー・ウィドウが、可愛い孫息子のプレゼントとして
彼の職場のロケバスで東京から浜松の音楽ホールまで行くコロナ禍での話。
ここにも過去の"事件"をさり気なく著す巧みさが秀逸だし、
結末が……
派手な展開とか恋愛とかはほぼ無い、とは言えるものの、
どれも面白くて、電車で読んでいると乗り越すタイプの小説だった。
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