秘密の匂いをまとった怪しくでも美しい一家をめぐる長編。
モヤモヤ感と謎が満載の面白い小説。
ほぼ無名の若手新人作家園洲律は、スランプの中にいた。
出演したテレビを見たファンから、出版社を通して会いたいとの依頼があり、
面会してみると、いきなり、その女性·九鬼梗子の目から涙が溢れ出す…
またまた"生き写し"の二人の物語か〜、今月2冊目だ、と我ながら驚いた。
読み進んでいくと、売れない小説家律の好奇心によって
金持ちで美男美女の九鬼夫婦と利発な一人娘の生活が明らかになると同時に、
律の貧しさが対比するように浮き彫りになる。
梗子の亡くなった姉·百合と似ているということだけで
九鬼一家の抱える問題に巻き込まれてゆく律。そして読み手は、段々物語の奥に潜む秘密めいた匂いに感づいてゆく。
そこが面白い。
作者自身が投影されたようなヒロイン律のマンガチックなヘタレぶりに、笑ったり怒ったり。
だが、隠された真実が暴かれるに従って……
ちょっとミステリーの色気を帯びた、家族のお話だった。
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