「乳と卵」の続編のような長編で、とても良かった。
大阪弁爆発で柔らかな口調で運ばれて行くが、子供を強く望む若くない独身女性の、とても真剣な物語。
若手小説家の夏子は大阪出身で東京で一人暮らししている。
家族は娘と共に大阪に暮らすシングルマザーの姉一人。
物語は、夏子が自分の子供に会いたい、という気持ちから
人工受精を目指し奮闘するところから展開して行く。
最初は「乳と卵」をなぞる感じで読み飛ばしていけるが、
編集者や、シングルマザーの売れっ子女性作家と交流し、さらに
人工受精で生まれた父親のわからない若者等と触れ合う辺りから、
とても重厚なテーマが紡がれていき、面白さに深みが加わる。
でも、川上未映子節とも言える、柔らかくも鋭い大阪弁に、
深刻さが心地よくくるまれて、息苦しくなく読み進むことができる。
死に行く命の「ライオンのおやつ」と
生まれ来る命を望む「夏物語」、
充実した読書が図らずも続いている。我ながら感心。
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