芥川賞作家のデビュー作。あまり長くはないけれど、十分重い小説。
主人公は大学にテキトーに通い、友達も居て、ちょっと遊ぶ相手としての女子にも事欠かない、一人暮らしの若者。
そんな彼が、ある夜、拳銃を拾ってしまったところから始まる、暗くてイヤな感じのする物語だ。
ハナから、その拳銃に取りつかれてしまうさまが、
実によく描かれている。
心理的には勿論だけれど、主人公を取り巻く若者たちや、近所の大人や離れて住む家族など
本当にうまく著してある。
奇しくも平岩弓枝のインタビューでの発言、小説は物語を書くのではなく人を描くのだ、
というのは、まさにこの小説に当てはまると思う。
登場人物の誰にも好感が持てないし、ハラハラ感はあるが、決して楽しくないし、
主人公たちにも魅力ないし、とにかく暗い
にもかかわらず、新幹線の名古屋から東京駅まで一気に読んでしまえた一冊だった。
この著者ならば、私は断然「掏摸」が好きだけれど、文則ワールドに入り込むならば
マストな作品だろうと思う。
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