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2024年12月04日17:06

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進化X深化X新化 Vol.2 (田部京子ピアノ・リサイタル)

田部さんのこの朝日ホールでのリサイタル・シリーズは、昨年、20周年の区切りをつけました。その折り返しともいうべき新シリーズ。今回はその第2回。

「折り返し」という意味合い、その意気込みの相貌がいよいよはっきりと見えてきたような気がします。

前回も同じことを感じたのですが、ピアノがとても重たい。前回まではベーゼンドルファーだったのに、今回はハンブルク・スタインウェイに戻りました。そのせいもあるのでしょうが、まるで違う曲を聴いているかと思うほどさらに重みを増しました。

シベリウスは、田部さんが20年以上前に英国のCHANDOSに録音した、シベリウスのピアノ曲集として名盤ともいうべきCDがあります。しかし、その繰り返しではない――とても違う演奏に驚きました。

テンポは遅く、ひとつひとつの音がとても深刻。特に低弦への沈み込みが深く、いままでにない音色と響き。ここに今の田部さんのこだわりのようなものを感じます。樹々のそれぞれの孤独がより深刻で寂しさを増している。CDの樹々が秋ならば、この演奏は厳寒の北欧の冬。

フランクは、家の中の暖かみを感じさせる空気感に包まれています。それでも清冽な美音と透き通った叙情味あふれるロマンチシズムは根底では、初めのシベリウスの演奏と同じだと感じます。フランクのピアノ曲には、「前奏曲、コラールとフーガ」がありますが、あの厳粛さはここでは影を潜めていてずっと人間的な祈りのような静けさの中で終わる。

前半最後のグリーグも、たびたび田部さんが取り上げてきた曲。サラバンドの叙情、アリアの詠嘆、リゴードンの短調のトリオは哀切極まりなく民族の始祖への限りない尊崇がまるで亡霊を引き寄せたかのよう。それとは対称的な主部に祝祭的な華やぎがあります。こういう情感のコントラストが見事。

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後半は、すべてドビュッシー。

ドビュッシーのためにピアノを換えたのかなと思わせるところがあります。その意味ではスタインウェイでどのような音楽にしたかったのかは、すでに前半で実証済みのような気がします。

いずれの曲でも、ひとつひとつの音の色彩やフレーズの揺らぎなど、音楽の彫たくが深く、陰影が鮮やか。どんなに小さな音、細かな表情をもおろそかにせず、丁寧に磨き上げ、それでいてピアニズムのモビリティを指先で味わい尽くすような喜悦に満ちている。ドビュッシーが、ピアノという楽器の機能的な可能性にすべてを賭けて織り上げた音楽がそこにあるという感覚。そこがラヴェルとは違う。

ドビュッシーというのは、知的に過ぎて機械のように音と音とが緻密に動くものではあっても、その複雑な機構が難しくて、音楽として難解なところがあります。田部さんのドビュッシーは、ずっと直感しやすい。その意味では、とてもユニーク。いままでアンコールでよく取り上げていた「月の光」も、こうやって組曲のひとつとして峻厳に弾かれると、いささかの甘さもない、本当にピュアな美意識に満ちたものになっています。田部さんにとって満を持したドビュッシーなのだと思います。

最後の「喜びの島」には、そういうドビュッシーのピアニズムの技巧が爆発的に炸裂するような曲。技巧をひけらかすように取り上げるピアニストも多いのですが、田部さんはやはりこの曲を最後に持ってきて、いわばドビュッシーのピアノへのオマージュ、賛歌を歌い上げているかのようであり、同時にそれが弾ける喜びそのものを爆発させている。このエピローグに客席は沸きに沸きました。




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田部京子ピアノ・リサイタル
―SHINKA― <進化X深化X新化> Vol.2

2024年12月1日(日) 14:00
東京・築地 浜離宮朝日ホール
(1階9列12番)

田部京子(ピアノ)

シベリウス:樹の組曲 op.75
フランク:前奏曲、フーガと変奏曲(バウアー編)op.18
グリーグ:ホルベルク組曲(ホルベアの時代より)op.40

ドビュッシー:2つのアラベスク
ドビュッシー:ベルがマスク組曲
ドビュッシー:版画
ドビュッシー:喜びの島



(アンコール)
ドビュッシー:夢
グリーグ:君を愛す0

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