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2018年09月19日00:19

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橋本杏奈 クラリネット・リサイタル

クラリネットのソロ・リサイタルというのは珍しい。クラリネットが大好きでオーケストラのクラリネットのソロ・パートにいつも聴き耳を立てている私も、実は、今回が初めて。しかも、大型新人でしかも日本人という橋本杏奈には大注目で、虎視眈々と生を聴く機会を窺っていた待望のリサイタル。

管楽器奏者というのは、独立したソリストとして成り立つ奏者は少ない。例外的なのはフルーティストぐらいですが、それでもよほどの人気者でなければピアニストを伴っただけのリサイタルを立てるのは難しい。ふだんは、オーケストラへの客演奏者として活動することも多い。橋本もBBC響、フィルハーモニー管、ロンドン響、ロイヤル・オペラなど在ロンドンの楽団の首席やエキストラ奏者として客演することが多いそうだ。

プログラムは、そういうクラリネットのレパートリーがぎっしり。プログラムノートによれば、人生の大半をイギリスで過ごし王立音楽院で学んだ橋本のこだわりなんだそうだ。いずれも技巧を凝らしながらもクラリネットの音色や響きの魅力が満載の素晴らしいリサイタルでした。

ホロヴィッツは、ウィーン生まれのイギリスの作曲家。ロンドン響で長年活躍したジャーヴェイス・ド・パイアーの委嘱で1981年に作曲されたソナチネは古典的な落ち着いた雰囲気の中にモダンな音色や音型、技巧を凝らした素敵なクラリネット音楽。最後はジャズっぽい軽妙なロンドで終わります。

ホーンは、カーティス音楽院やハーヴァード大学に留学したバリバリの現役作曲家。無伴奏の独奏曲は壮絶なヴィルトゥオジティーを発揮する曲で、たった6分間の曲とは思えないほどの密度の高い音楽でした。

ハウエルズのソナタは、戦前の名手フレデリック・サーストンに捧げられた曲で終戦直後の暗く瞑想的で回想的な雰囲気の美しいソナタ。冒頭のピアノに現れる独特の和音がとても印象的です。

寺嶋陸也は、作曲家とピアノの二足のわらじですが、こういう二十世紀音楽をやらせると本領発揮の感があります。室内楽アンサンブルや音楽祭でよくお目にかかるピアニストですが、橋本杏奈との息もぴったりという感じです。

さて、プログラムの後半は…

スタンフォードは、エルガーなど門弟たちのポピュラーな活躍の陰に隠れてしまっていますがイギリス近現代音楽の源流を形作った大作曲家。この日のプログラムの要に据えられた「3つの間奏曲」は、ブラームス的な中欧音楽の正統を思わせる情感表現の充実と優美な形式美が融和したとても聴き応えのある曲でした。これは、クラリネットの名曲だと思いました。

バッハの「シャコンヌ」ピアノ編曲版で有名なブゾーニは、もともとはヴィルトゥオーゾのピアニストとして有名でしたが、最近は作曲家としても見直されその作品に触れることが多くなりました。そのブゾーニの父親がクラリネット奏者だったとは初めて知りましたが、その父親は《神童》ブゾーニをピアノ伴奏者として連れてヨーロッパ各地を演奏して回ったそうです。この「クラリネットとピアノのための組曲」はそういう父親との演奏のために何と9歳のブゾーニが作曲したのだそうです。親しみやすい音楽的意匠のなかに堂々とした風格も備えていて、これが9歳の少年の作だとは信じがたいものがあります。

プログラム最後のローゼンプラットも、現役バリバリの作曲家。最後をかざるにふさわしいエンターテインメントたっぷりで、重音奏法などモダンな技巧もたっぷり取り入れた超ヴィルトゥオジティーを発揮するド派手な曲。まさにクラリネット版の「カルメン幻想曲」というわけで、会場は大いに沸きました。





土曜ソワレシリーズ《女神との出逢い》第275回
橋本杏奈 クラリネット・リサイタル
2018年9月15日(土) 17:00
横浜・青葉台 青葉区民センターフィリアホール
(1階 9列9番)

橋本杏奈(クラリネット)
寺嶋陸也(ピアノ)

ホロヴィッツ:クラリネットとピアノのためのソナチネ
ホーン:独奏クラリネットのためのPhantoms・「幻影」(日本初演)
ハウエルズ:クラリネットとピアノのためのソナタ

スタンフォード:3つの間奏曲 Op.13
ブゾーニ:クラリネットとピアノのための組曲 op.10
ローゼンプラット:ビゼー「カルメン」の主題によるファンタジー

(アンコール)
ホロヴィッツ:ヴァルデモッサ

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