mixiユーザー(id:26897873)

2018年05月31日10:50

504 view

カザルスのベートーヴェン(新忠篤氏ミニコンサート)

カザルスのベートーヴェンの録音といえば、コルトー(ピアノ)、ティボー(ヴァイオリン)と組んだいわゆる黄金のトリオとして録音した「大公」トリオが有名だが、この日、新氏は電気録音になってから英HMVで吹き込んだSPレコードから、ソナタと交響曲を聴かせてくれた。カザルスは50代の円熟期に指揮者としても活動を始め、バルセロナにカザルスのためのオーケストラ(The Pablo Casals Orchestra of Barcerona)も創設された。後半の交響曲第4番はそのオーケストラによる演奏である。

再生装置は、

スピーカー:GIP WE4189レプリカ
パワーアンプ:300Bシングル(エレキット改造 →OPTをルンダール製に換装)
DSDプレーヤー:ONKYO HA-300(ネイティブ再生)

フォト

新氏は、試聴会でのSP再生は、いつもこうやってDSDにトランスファーしたものをDSDプレーヤーで再生している。直接再生するものとほとんど遜色がないという。盤の掛け替えの手間も不要だ。

デジタルアーカイブは、簡単なようで実はそうではない。やはり、アナログ再生の技術が必要だからだ。盤面のメンテ、カートリッジの選択などのスキルが必要で、手間もかかる。LPレコードのデジタル化であっても難しい。

今回のDSD化では、カートリッジはGEバリレラを使用。針は3ミル。一般に2.5ミルは戦後のディスク再生にマッチし、4ミルの太めのものは機械式録音時代のものでしばしば好結果を得るとのことだ。

フォト

スピーカーは、いつもの、アムトランス備え付けのGIP製WEレプリカによる2wayシステムだが、今回は、GIP4189のみのフルレンジ一発で鳴らしている。そもそもオリジナルの4189はフルレンジとして開発されたものだそうで、十分に帯域をカバーしてくれている。新氏によればツィターのセッティング・調整がいまひとつで、この日は、かえって邪魔になると外してしまったとのこと。新氏のSP再生はいつもよい音がしているが、そういう多くのスキルが集成された総合力なのだと、いつも思う。

チェロ・ソナタは、米盤を使用している。英HMVは独特のサーフィスノイズが大きくて聴きづらい。米盤等があれば、そちらを選択するとのこと。

そのチェロ・ソナタが、演奏、録音ともに素晴らしかった。カザルスの作品69はおそらく初めて聴いたけれども、雄渾でスケールの大きい演奏でありながら、とても厳しい。シュルホフはウィーンのピアニストで、音楽院で教鞭をとるかたわらカザルスと活動をともにした。カザルスの相方としてはホルショフスキーが有名だが、シュルホフも格調が高くてよい。チェロの響きは、人間の生活サイズと聴感にぴったりなせいか、SPでも素晴らしくよく鳴る。その芯のしっかりしたエネルギー感に満ちあふれた音色は、とても100年近く前の古い技術による録音というのがにわかには信じがたいほどだった。

交響曲第4番は、聴きづらいという英HMV盤。音も決してよくない。「音質は決して耳に心地よいとは言えないし、なんでこんなものを聴かせるのかと思われるかもしれません。聴くに堪えないと思われたら、どうぞ席を立ってお帰り下さってもかまいません」と笑いながら話される新氏だったが、確かに聴きづらいし、音も不明瞭。

けれども、カザルスのベートーヴェンがとても厳しいことにあらためて驚かされた。けれん味を排除した即物的とも言える厳粛さで、それでいてベートーヴェンが持つ天を突くような気宇壮大な自由の賛歌とその熱狂がある。惜しむらくはオーケストラの技量が必ずしも現代の基準から言えば優秀とはいえず、早く強いパッセージではアンサンブルとしてのアーティキュレーションに爽快感に欠けること。録音が古いせいも多分にあるかもしれない。それにしても、カザルス指揮のベートーヴェンというのは、20世紀前半のベートーヴェン解釈のなかでも特異であり二十一世紀の私たちの感覚に最も近いとさえ思った。



フォト

ベートーヴェン:チェロ・ソナタ第3番イ長調作品69
パブロ・カザルス(チェロ)
オットー・シュルホフ(ピアノ)
米VICTOROLA 7568/70(英HMV DB1147/9と同一録音)


ベートーヴェン:交響曲第4番変ロ長調作品69
パブロ・カザルス指揮バルセロナ・カザルス交響楽団
英HMV D1725/8(1929年7月4日バルセロナ オリンピア劇場録音)
12 1

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する