mixiユーザー(id:26897873)

2017年10月02日10:38

1418 view

内田光子のモーツァルト (新忠篤氏ミニコンサート)

久しぶりに秋葉原・アムトランスでの新忠篤氏のレコードコンサートに出かけました。

フォト

この日のテーマは内田光子。

内田は、最近、階段で転倒したとかで松本フェスティバルのリサイタルをキャンセルしたようです。それでも小澤とのベートーヴェンの協奏曲の共演は果たしたとのことなのでなお健在のようです。

新氏は、フィリップスレーベルの日本支社(日本フォノグラム)で長らく制作部門に在籍しプロデューサーを勤められた。内田光子の録音はロンドンで行われましたが、そのほとんどに日本から出張されて立ち会われたそうです。その時のエピソードなどを交えながら、内田の出世作となったモーツァルトを聴かせていただくという会です。

フォト

内田は、外交官だった父の赴任先ウィーンでリヒャルト・ハウザーに師事。1970年ショパン/コンクール第2位となり(これは同コンクールの日本人最上位記録でいまだに破られていません)ますが、古いウィーンの楽壇では鳴かず飛ばずで鬱屈の日々。古い因習にとらわれたウィーンを去りロンドンに移住します。1982年にウィグモアホールで5夜にわたる「モーツァルト/ピアノ・ソナタ連続演奏会」を開き“ウチダの火曜日”と絶賛されることになるのです。

フィリップスとの契約を進めるにあたっては、本人の希望もあってシューベルトが取り上げられることになっていたそうです。何しろフィリップスというのはモーツァルト演奏の宝庫で名だたる名演がざくざくと溢れかえっています。これにがぜんと異を唱えたのが新氏の日本支社。売れるのはモーツァルトだというわけです。日本人演奏家の最大市場は日本ですから、オランダの本社はついに折れることになったのですが、これが結果として大当たりとなったのです。

フォト

アンプは、新氏製作の300Bppアンプ。CDプレーヤーのA−730はバランス出力を備えているのでこれをテックラボのバランスアッテネーターを通じてこの300Bアンプに送り込んでいます。

フォト

スピーカーは例によってGIPラボのWEレプリカですが、今日は最新の4165のレプリカ。30�僂離侫襯譽鵐犬箸いΔ里脇汎辰離丱薀鵐垢里茲気�あってとても自然でまったく強調感のない整った音。音像はスピーカー前面よりわずか前に結像します。その分、奥行きがやや浅めという音場になります。ほんとうにいい音ってこういうことだなぁと思わず聴き惚れてしまいました。

フォト

内田の録音は、ソナタ全集から協奏曲全集へと順に進められていきました。最初にかけられたのは、その記念すべき第1号となったアルバムから、K331のトルコ行進曲のついたイ長調のソナタ。こうやって改めて聴いてみると、内田のモーツァルトは実によく歌います。ロマンチックに過ぎるとの評もある内田のモーツァルトですが、ロマンチックというよりは歌。最弱音に至るまですみずみまでほんとうに歌心にあふれています。

フォト

ピアノがとても独特の音色で、スタインウェイらしからぬ木質の柔らかい響き。

内田は、この時、自宅で普段から弾いていたピアノを使用したそうです。調律師は、内田が深い信頼を寄せていたヤマハの辻文明氏を日本から派遣し念入りなチューニングをしていましたが、その個性的な音調に新氏は何度も「これでいいの?」と確認されたそうです。録音や当時の再生システムのせいかとも疑ったこともあったそうですが、こうやって改めて聴いても同じ音がして、これがやはり内田が求めた理想の音だったと新氏は笑っておられました。

フォト

次は、ニ短調のピアノ協奏曲。同じようにこれがピアノ協奏曲録音の第1号となったアルバム。

再生システムのキャラクターなのか、ピアノの音像はやや大きめでオーケストラの奥行きなど空気感はあまり感じられませんが、木管のソロなどパースペクティブは十分です。低域はどちらかというと抑えられていてあまりバスラインを強調しないウェルバランス。プロデューサーはソナタと同じでエリック・スミス。DECCAから移籍した人で、カルショーの下であのリング全曲録音にも携わっていたそうです。大変なモーツァルトの権威で何冊か本も書いているとか。エンジニアのラウタースラッハはとても優秀な人で、新氏は彼が手がけたコリン・デイヴィスの「トスカ」は録音として最高傑作だと絶賛しておられました。

フォト

最後は、「戴冠式」。

前のイ長調ソナタとニ短調コンチェルトとはがらりと音調が変わります。同じフィリップスの同じ内田のシリーズでこんなにも録音が違うのだというのは新たな発見でした。プロデューサーはフィルヘルム・ヘルヴェック、エンジニアはオノ・スコルツェ。内田の録音はすべてデジタル録音ですが、この二人のコンビの録音こそがCD時代のフィリップスサウンドだと言ってよいと思います。こうして聴き較べてみると録音機材やそれにともなうチューニングががらりと一新されたのではないかと感じます。

さて…

フォト

これは、初盤オリジナルではなく、後にクリスマス商戦用に企画された組み物のCD。実は、ここでのカデンツァはオリジナル盤と差し替えられてランドフスカのカデンツァが演奏されているというのです。

カデンツァ部の録音では、オーケストラは帰されて、ピアニストだけで録音されるそうです。カデンツァは内田自身のカデンツァが使われています。収録後、他に誰もいないセッションの気楽さもあって新氏が内田にちょっとした戯れ言で「ところで内田さんはランドフスカのカデンツァは弾ける?」と聞いたそうです。「ええ、弾けるわよ。やってみる?」と軽く請け負った内田は再びピアノに向かいます。内田はいとも簡単にしかも暗譜で演奏したそうです。事前にいろいろと研究していたというわけですが、その出来映えがあまりに素晴らしく本人も満更ではなかったとか。それで、後年、この組み物を企画するにあたって本人の了解を得てこのテイクに差し替えた。いわば、珍品のレアものというわけです。

最後に、改めてランドフスカ自身の演奏をSP復刻CDで聴かせていただきました。実に闊達で、途中、フィガロの結婚のフレーズのパロディを入れるなどユーモアもたっぷり。何だかジャズのインプロヴィゼーションのようで、SPの針音の向こうからワンダがこちらに視線を送りニヤリとしている様子が目に浮かぶようです。ああ、カデンツァというのは本来こういうものなのだなぁ…と思わずにはいられませんでした。







1. ピアノ・ソナタ第11番イ長調 K.331 「トルコ行進曲つき」
録音:1983年10月 ロンドン、ヘンリー・ウッド・ホール
(エリック・スミス Producer)
CD:PHILIPS PHCP-1637

2. ピアノ協奏曲第20番ニ短調 K.466
(カデンツァ:ベートーヴェン)
ジェフリー・テイト指揮イギリス室内管弦楽団
録音:1985年10月7-10日 ロンドン、ヘンリー・ウッド・ホール
(エリック・スミス Producer/ハンス・ラウタースラッハ Balance Enginieer))
CD:PHILIPS PHCP-1024

3. ピアノ協奏曲第26番ニ長調 K.537「戴冠式」
(カデンツァ:ワンダ・ランドフスカ)
ジェフリー・テイト指揮イギリス室内管弦楽団
録音:1985年10月7-10日 ロンドン、セント・ジョンズ・チャーチ
(ヴィルヘルム・ヘルヴェック Producer/オノ・スコルツェ Balance Enginieer))
CD:PHILIPS PHCP-432 522-1



使用機材
スピーカー: GIPラボラトリーGIP-4165(30cmフルレンジ)+GIP-597A(ツィター)励磁式
パワーアンプ: WE-101pp+WE-300Bppバランス伝送方式
アッテネーター:テックラボ(600Ωバランス)
CDプレーヤー:STUDER A-730(バランス出力)

15 2

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する