mixiユーザー(id:26897873)

2017年06月22日18:11

988 view

嘉義に着いたら起こしてくれ (台湾旅行記 その8)

台湾旅行記の続きです。

フォト

台湾東岸の花蓮から、台北を通り過ぎて一気に一日で西岸の嘉義を目指します。こんなことが出来るようになったのは、東岸の鉄道の発達や新幹線(台湾高速鐵路=高鐵)開通のおかげです。

嘉義というと、2年ほど前に日本でも公開された映画「KANO」で一躍その名を知られるようになった町です。

フォト

戦前、台湾が日本の統治下にあった時の甲子園に出場した嘉義農林学校(現・国立嘉義大学)、略して「嘉農−かのう」の野球部のお話しです。

一度も勝ったことのない弱小チームが、松山商業出身の甲子園球児でもあった近藤兵太郎のコーチ監督就任をきっかけに、周囲のべっ視などあらゆる困難を乗り越え勝ち進み甲子園出場を果たし、初出場ながらあれよあれよいうまに決勝にまで登り詰めるという、涙あり笑いありの痛快な野球ドラマです。

純然たる台湾製作の映画ですが、主役の近藤兵太郎を演ずる永瀬正敏はじめ多くの日本人俳優も出演し、当時のまま、台湾語、客家語、原住民語(アミ語)とともに日本語がそのまま話されます。むしろ日本語が主体なので、日本製作の統治政策礼賛映画ではないかと錯覚してちょっと軽いめまいがするほどの映画。

大沢たかお演ずる嘉南農水路建設に取り組む日本の水利技術者・八田與一が野球チームを応援するという場面がありますが、この八田與一の記念像が、親大陸派(=アンチ台湾独立、反日)の元台北市議によって破壊されたというニュースは耳新しい。

けれども、内容はとても真摯で感動的な映画なのです。

すべて実話に基づいていますが、台湾でも日本人だけのチームがあたりまえだった時代に、日本人、中国人、そして当時は「高砂族」と呼ばれていた台湾の原住民との三民族混成という異色のチームでした。

甲子園出場といっても、そんな植民地からの無名のチームをみんな見下していました。

そのチームが甲子園で初勝利を挙げて話題騒然となった時に、ある新聞記者が「野蛮な高砂族に日本語が分かるのか」などと差別的な発言を投げかけます。「どうやってチームでコミュニケーションをとるんだ」というわけです。この記者は、この後、「天下の嘉農」とチームの活躍を大絶賛することになります。確かに差別的な発言なのですが、この記者は、実は、チームにとって「コミュニケーション」が大事だ、それをどうするんだ?というあたりまえのことを言っていたのだと思います。そして、嘉農チームは、それぞれの民族の秀でた特性を、守りや打撃力、走力などそれぞれの持ち味にして、素晴らしいコミュニケーション力で決勝にまで勝ち進むというわけです。

甲子園の初回戦の相手は、札幌商業。日本の北端の地・北海道代表と南端の台湾代表の南北対立は注目を集めますが、下馬評は札幌商業の圧倒的優位。そのエースにして主将の錠者(じょうしゃ)博美は絶大な自信と重圧に揺らいでいて、その予期せぬ敗北に打ちのめされるととともに、嘉義農業のひたむきさに感動と共感を覚えます。

その錠者は、敗戦濃厚な戦中に陸軍大尉としてフィリピンへ出征の際、基隆から高雄に向かう列車に乗車する際、同僚にこう言います。

「嘉義に着いたら起こしてくれ」

錠者は、甲子園で打ち負かされた嘉義農業の本拠地を訪れるために、どうしても途中下車したかったのです。彼は、嘉義農業の練習場のマウンドに立ち、そのあまりに粗末なグラウンドを見て再び言うに言われぬ感動を覚えます。

当時、台湾からバシー海峡を渡ってフィリピンに向かうことは海を無事渡れることさえも少ないという死の絶望、「戦意喪失」そのものだったとあの山本七平が書いています。実際、当時の軍人の間では、絶体絶命の境遇をものともせず勝ち上がっていった嘉義農業の球児たちの闘魂を希望の光として「嘉義に着いたら起こしてくれ」という言葉が合い言葉のように繰り返されたということでした。そういう日本人側の暗い心情はさすがに描かれようがありませんが、支配者である日本軍人たちからさえ受けた畏怖と尊崇の念を誇らしく思うことは台湾人として当然なのだと思います。

フォト

実際、いまだに台湾はこの映画の残り香が強く漂っています。映画のポスターは、台北の街でもそこかしこで見ました。主役のひとり、呉明捷が早稲田大学へ進学、六大学野球で活躍したこともあって早大野球部は格別の扱いのようで、その記念遺品展示会ポスターまでありました。

フォト

映画でも嘉義の街のシンボルにもなった中央通りの噴水は今も健在で、私たちはそこから徒歩1分ほどのビジネスホテルに宿を取りました。そのホテルのロビーにもやっぱりこんなセットが飾ってありました。

そこからすぐの通りでの夜市がとてもにぎやか。

フォト

ホテルで聞いた嘉義名物の店に食事に行きましたが、長蛇の列。「列」とは言っても、店先のおばさんに受け付けてもらってその番号を告げられるまでとにかく店の前でたむろしているというだけ。

フォト

1時間半も待たされましたが、一見、無秩序のようでいて混乱や争い、ましてや割り込みとか不正の類いは一切無いところが、いかにも台湾。大陸とは大違い。

フォト

あまりに待たされて、ようやくテーブルに着き、いかにも見かけの悪い下卑た料理が運ばれてきた時には、食欲も期待もすっかり失せかけていたのですが、食べてみるとこれが実にうまい!


フォト

これは、今回、台湾で食べた料理のベストスリーに間違いなく入る食い物でした。

フォト

(続く)

8 8

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する