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2016年12月01日16:48

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「ユーロは絶対に崩壊しない」(伴野文夫著)読了

著者は、元NHK国際・経済担当解説委員。1968〜83年、ブリュッセル、パリ、ボン(西ドイツ)特派員を歴任し、EUの誕生を現地でつぶさに見てきたEU通を自負している。

メディアはしきりにユーロ崩壊、EU解体などとセンセーショナルに書き立てている。著者によれば、それはとても場違いで、「ユーロ経済圏はゆるがない」と言う。むしろ、こういうEU危機説は、英米のマネー資本主義が仕掛け、ジャーナリズムがそれに呼応して危機を煽り、シティやウォール街が大いに稼ぎまくるというアングロサクソンの筋書きの一環に過ぎないとまで主張する。

日本のジャーナリズムは、そういう筋書きに乗せられているだけだという。大新聞の欧州の根拠地のほとんどがロンドンにあることも、そうしたアングロサクソンの視点に極端に片寄った論調に染められている要因だという。

私は、ユーロ導入時に貿易の仕事に携わっていたが、その時のことを思い起こすと確かにそういう面があったと思う。当時、製品をスウェーデンの顧客に輸出していたが、ユーロ建て契約、ユーロ決済を求められて、日本の立場から抵抗したことがある。決済体制が整わず時期尚早と返答し、ユーロの将来にも懐疑的だったのだ。これに対して、顧客は不満そうだった。ユーロ不適用のスウェーデンの顧客ですらそうだったのだ。一方で、私たちはドルを唯一の基軸通貨とみなす体制にどっぷりと浸かっていた。それは、今でも程度の差はあれ、同じようなものだろう。

さすがに、長年にわたって欧州をウォッチし続けてきただけに、汎欧州主義を源流として戦後に設立された欧州石炭鉄鋼共同体を前身とするEUの歴史に詳しい。欧州とはどういうものなのか、そういう背景については三十年戦争とヴェストファーレン条約にまで遡る。その根底に脈々と流れているのは、度重なる戦争への反省であり、平和主義なのだ。そのなかで、今回の英国の離脱にも十分な歴史的文脈があったことがよく理解できる。

本書でも紹介されているNHKBSワールドニュースは、私も必ず見るようにしている。この世界各国のニュースは、日本国内向けの報道ばかりを見ていると見過ごしたり、歪んだ感覚を持ちがちな私たちの国際感覚を是正するのに役立つ。いつも思うことだが、米国ABCの報道がほとんど国内問題に終始するのに対して、フランスF2は国際的な視野の広さがあってその慧眼にはいつも感服させられる。

本書は、小冊子ではありながら読み応えがあって、多くの日本人にとってはとても有益な啓蒙書だと思う。

多少の不満を言えば、独自の視角を持った著者といえどもジャーナリストのひとりであるためか、記述が歴史的、政治的な視点に偏っていて、経済・金融など経済学的な深みに欠けること。もう一つは、移民問題など民族問題や貧富格差、ポピュリズムの動向がEU体制に与えるインパクトについて、やや軽視・楽観していることだろうか。著者もおそらくトランプの勝利には否定的だったのではないか。

もともとは、マイミクのロベルトさんの日記に触発されて読んでみたもの。幻冬舎ルネッサンス新書というのは自主出版だと初めて知った。そのせいで書店の店頭では見つからず、図書館にもなかった。結局はアマゾンで求めることになった。ロベルトさんの薦めがなかったらあきらめてしまうところだったろう。感謝したい。


フォト
ユーロは絶対に崩壊しない
米英マネー資本主義に立ち向かうEUの大陸資本主義
伴野文夫 著
幻冬舎ルネッサンス新書




第一章 ギリシャ危機で鍛えられ大ものになったメルケル独首相
第二章 利益至上主義を否定する大陸ヨーロッパの資本主義
第三章 EUが取り組む四つのテーマ
第四章 イギリスが離脱してもユーロ経済圏は揺るがない
第五章 二〇一七年の独仏二大選挙、メルケル独首相はEU大統領へ

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