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2016年10月09日08:17

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天使の分け前 (スコットランド旅行記 その10)

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スカイ島に別れを告げてイギリス本島にもどります。この日は、215マイルのドライブという長丁場ですので、途中で立ち寄るのはただ一ヶ所。

それは、映画「天使の分け前」の舞台ともなったバルブレア醸造所。

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この映画のことは以前に日記でご紹介したことがあります。
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http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1901166253&owner_id=26897873


原題の“Angel's share”〈天使の取り分〉の意味は、もちろんウィスキーが樽のなかで熟成されるおりに年2%ほど蒸発して失われることのこと。それを巧みにストーリーと絡めたとても面白い映画でした。

いくつもの醸造所が舞台となるその映画で、最後に登場するのがこの醸造所です。

コレクター垂涎の的である稀少な銘酒《モルト・ミル》のカスクひと樽がバルブレア蒸留所の熟成庫で発見され、オークションにかけられるというお話しです。

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私たちが醸造所を訪ねると、まだツアーの時間には間があって、事務所のお姉さんたちとひとしきりおしゃべり。やがて、3組ほどの客がついてようやく受付センターのほうへ移動。タリスカーだけでなく、この後、訪問する蒸留所のなかでも一番家庭的な雰囲気の蒸留所でした。

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センターには、映画のフランス公開時のポスターが飾ってあります。その横には従業員ひとりひとりの写真が並んでいます。全員でほんの十数人。季節性の高い蒸留所の人々は、皆さんそれぞれに別の職業があって警察官というひともいるそうです。ご夫婦も多いようで、ほんとうに家庭的。

カメラも最初のミリング(粉砕器)以外はすべてOKと何とも大らか。ミリングがNGなのは、原料となる麦芽や麦粒を粉砕しミックスする工程で粉じんが舞っていているため火気厳禁だから。電子機器類は使用禁止というわけです。

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麦芽と水を混ぜ、加熱すると麦芽中の酵素の働きででんぷんが糖へと転化されます。ここではマッシュタン(糖化槽)も含めて、いまでもレトロな木製(マツ)の大樽が使われていました。絞られてウォート(麦汁)は熱交換器(板式熱交換器)でいったん冷まされて、次の工程に送られ酵母が加えられていよいよ発酵させられます。板式熱交換器は、タリスカーではデンマーク製でしたが、こちらはスウェーデン製。とても古いものです。

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案内のお姉さんは、いくつものウォッシュバック(発酵樽)をのぞき込んで、そのひとつにいとも無造作にレードルを突っ込み発酵が進んだ麦汁(ウォッシュ)を汲み上げます。それをグラスに注いで自分で試してみると、試してみない?と私たちにすすめてくれます。生暖かく酵母の甘い香りの麦汁をすすってみるとビールよりも甘く酸味を感じます。こんな体験は初めてでした。

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蒸留工程はお休み中。でも、それだけにごく間近に見ることができてポットスチル(蒸留器)に触れることさえできました。このポットスチルが蒸留所によって大小、形が様々でそれがモルトウィスキーの個性となります。加熱はTVドラマ「マッサン」の時代のような石炭炊きはもうほとんど無くてスチームです。

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建物の外には揮発したアルコールを冷やして液体に凝集させるコンデンサ(管式熱交換器)が直立しています。中には水を通すパイプが幾重にもなっていてこれでアルコール蒸気を冷やして水に戻すわけです。ここで水を大量に消費しますので、蒸留所には豊富な水源が不可欠です。蒸留所は、小さな火力発電所のようなものなのですね。

最後に映画でもお馴染みの熟成庫。

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入り口には厳重な南京錠がかかっていて、入った人数と出る人数を確かめます。「そうでないと大変なことになるからね」と笑いながらウィンクするお姉さんですが、映画のストーリーを踏まえたジョークです。

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薄暗い内部は古くて蜘蛛の巣だらけ。天井も低くて樽はダンネージで重ねただけの3段に積まれていました。

最後はテースティング。

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テースティングは、まず色と香りを確かめ、さらにグラスをふるって立ち上る香りを楽しんでから一口すすって、今度は口に拡がる香りを鼻に抜いて味わい、さらに舌で転がして味をみます。次に加水して同じことを繰り返す。香りが展開してまた違った香りを楽しむのです。加水はほんの一滴。最近の流儀はウォーターグラスに小指を入れて濡らして、その指をテースティンググラスにかざして指先からほんのひとしずくを垂らすだけということのようです。

小学生の時の真新しい教科書の匂い、本を開くとさらに鮮やかな匂いを感じてわくわくしたことを思い出します。

バルブレアは色もボディも中庸。麦芽っぽいドライな香りと軽いオーク臭に加えてほんのりと甘みを感じます。どこか「おじいちゃんの古時計」を連想させるようなハートの温かいシングルモルト。娘はセルフボトリングのシングルカスクを買い求めていました。

運転手の私はそこでは飲めませんが、小さな試薬用のガラス瓶までくれたので持ち帰ってホテルでテースティング。

(続く)
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