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2016年09月22日02:40

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上様邸訪問(関西オーディオ行脚 その1)

お誘いがあって、先だっての連休に関西に遠征してきました。

第1弾は、大阪の上様のお宅です。

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何とか迷わずに電車を乗り継いで最寄りの駅に無事たどり着くと、上様じきじきに車でお出迎えいただきました。部屋に案内いただくと、遮光カーテンで昼なお暗いどこかマニアの巣窟(笑)のようなオーディオ専用部屋です。「小さな部屋でしょ?」というその部屋は6畳間とのことですが、もう少し広くてあるいは8畳ぐらいに感じるのは私が関東の団地暮らしで育ったせいでしょう。同じ戸建てでもわが家のようなハウスメーカーの家は柱割りになっていて畳のサイズはまちまち、団地サイズより小さいかもしれません。

ひと息入れる間もなくすぐに流れたのは、バッハの無伴奏パルティータ。

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恐る恐る「これは誰の演奏ですか?」と聞くと「イザベル・ファウスト」とのこと。この後しばらくは次から次へとクラシックを聴かせていただきました。上様というとポップ・ロック系というイメージで、ご自身からも「クラシックはあまり詳しくありません」と伺っていましたので、これは面食らいました(笑)。私がクラシック好きということでご配慮いただいたのだと思いますが、上様のお顔は自信に満ちていて、挑戦を挑まれたような気もしてきてこちらはたじたじ。ちょっとばかり緊張してしまいました(笑)。

ひととおり聴かせていただいて小休止。上様の手料理の親子丼をご馳走になりました。これがまた美味しくて、聞けば昨夜から丁寧に出汁を取ってのこだわりの逸品。これには恐縮してしまいました。とはいえ美味しいものをいただくと、どこか緊張も和らいできます。この後は、RVG録音のジャズサウンド、映画のサントラ盤など様々な音源を聴かせていただきました。

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上様といえば、キソアコースティックHB−1の使い手として勇名を轟かせておられます。上流はPCオンリーですが、自作で組み上げたPCで筐体は様々な静音対策と振動対策が施された巨大なもので、NASなどは一切無用で内蔵HDDからサウンドカードにSATAで直結、ASIOで丸投げというシステム。現代の主流からは外れた、いささか「時代遅れ」だというのはご自身の弁ですが、かえって強いこだわりと気骨のようなものがあるようです。

実際、その出音(でおと)は、骨太で存在感のある厚みのあるサウンド。PCオーディオというとともすれば澄んだ小ぎれいな音で、どこか骨粗鬆症のような実在感に乏しいサウンドが多いのですが、これはむしろそれとは真反対のアナログ的な手応えのあるサウンドです。

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そのことはプリとパワーにFMアコースティックのアンプを使用されているということもあるのかもしれません。いま愛用のプリは修理中で代品だとのこと。愛器にはCMC(Carbon Micro Coil)などで独自のチューンアップが施されていて、代品ではその実力の9割程度だそうですが、どうしてどうして、SNのよい静寂表現にも凄味があり、なおかつ迫力十分のダイナミックな表現力です。

お伺いするとFMアコースティックを選択したのは、「球つながり」なのだそうです。もともとは真空管アンプを愛用していて、その音色、音感をそのままに、精確緻密でパワフルなサウンドを再現するFMアコに惚れたのだそうです。巨大なパワーに風を送るフロアファンの静かさにも感心してしまいました。これがないと内蔵のファンが起動してかえってうるさいそうです。

特に印象的だったのが、かつてFM放送時代にナカミチのカセットデッキでエアチェックしたカセットから起こした音源だというサンタナの来日公演の録音で、ライブ独特の熱気があふれる生々しいサウンドです。カセットテープ由来とは思えないようなワイドレンジと迫力。情報量が豊富で音楽性に満ちあふれています。

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しかも、HB−1のサイズからは想像もつかないような低域の表現力で、山本真希の「りゅーとぴあ」オルガンのペダル音の再生も見事。

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私が持ち込んだ「ローマの松」から「アッピア街道の松」の冒頭20小節目から加わるパイプオルガンのペダル音やグランカッサのpppの低音には思わず息を呑み、最後のコーダの大音量には「やったぁ!」と快哉を叫んでしまうほどでした。

驚いたのはその「音場」再現力。

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左右と奥行きの3D立体音像が完璧に再現されています。リスポジの制約もなく立体的な拡がりのある音場にぴたりと音像が定位して動きません。私が持ち込んだいつものパッヘルベルの「カノン」にも何も言うことはありません。部屋が小さいので有利だと思われがちですが、なかなかこういう音場再生ができているかたは多くはないと思います。特にジャズやポップ・ロック系のひとは音場には無関心なので、こういう正確なセットアップが難しいものです。

御本人にあけすけにそう申し上げると、笑いながら「ライブ録音音源が好きで、実際、ライブにもよく出かけるからでしょうね」との返答。やっぱり実際の生の音楽を聴くひとは、クラシックとかジャンルにかかわらずこういう音場感覚が研ぎ澄まされるのだと思います。音楽が真に好きで、そのためのオーディオです。高価な機器を取っかえ引っかえしてつなぎ換え、その音の違いを自慢するといういわゆる「ジコマン」オーディオが少なくありませんが、そういう人たちにとっては音楽はオーディオのための手段になってしまいます。ソースは何であれ主役は音楽です。オーディオは音楽を聴くための手段なのですね。音楽を聴くための機器の選択であり、音楽を楽しむためにチューニングや工夫の積み重ねることが本来のオーディオの趣味だと思うのです。

ちょっとだけ気になったのが音色。

最初から気になったのですが、全体的に音色バランスが下にシフトしていてちょっと暗めになってしまうこと。もういちどファウストのバッハを聴かせていただきましたが、ファウストが弾くストラドヴァリウス(“スリーピングビューティ”)に聞こえないのです。スピーカーの高さのことをお伺いすると、今のリスニングチェアは以前のものより座高が高いそうです。確かに姿勢を低くすると気になった音色バランスが改善します。

でも、それだけではないような気もします。

というのは、2ウェイ小型スピーカーは、ユニット間の距離が小さく、リスポジの高さの違いはこれほどには影響しないとも思うからです。スピーカーのセッティングというのは、リスポジとの関係もありますが、むしろ部屋との相対関係も大きいのです。

上様のリスニングルームは、けっこうさっぱりしていてほとんどルームチューニンググッズがありません。低音対策と思われるコーナー処理がされているぐらい。思い当たるのは両壁の高いところにあるLPレコードがぎっしり詰まった棚。その棚は、ちちょっと工夫があって下から丸柱で支えて下のスペースを確保し、リスポジの視線よりも高いところに両側から庇が出ていて、その上から天井にかけてまでぎっしりLPが詰まっているという構造になっています。天井にかけての高い部分の壁が高域を吸ってしまうかたちになっているのです。

今やアナログレコードには未練はないそうでEMTのプレーヤー2台も処分されてしまったとか。もしそうならLPレコードは処分するなり別のところに移すなりされたらよいのではないでしょうか。部屋の高い部分での高域拡散は、音色にけっこう効くようです。東京文化会館小ホールは、以前はちょっと冷たく全体に暗めの音色でしたが、近年の改修時に天井壁面の改造が施されてずいぶんと音が改善されました。おそらくLPレコードを撤去するだけでも、音色が改善され、部屋に充満するような音の拡がりと響きの高さが出てきて、いわゆるホールトーンや客席のざわめきといった「空気感」とか、拍手によりリアリティが出てくるのではないかと思いました。

3時間ほどの駆け足での訪問でしたが、とても充実した時間を過ごさせていただきました。上様の気概の高さ、男気のあるタフガイともいうべき気風そのままの素晴らしいサウンドにあらためて感銘を受けました。細かい気遣いもいただき、一方ではとてもくつろげた音楽タイムでした。ありがとうございました。

…というわけで、再び、慣れない大阪の電車や地下鉄を乗り継いで、次は目指すのは椀方さんのお宅です。

(続く)

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