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2016年01月28日23:15

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紀尾井 明日への扉10 日橋辰朗(ホルン)


若手や新進気鋭の新人の登竜門ともいうべき、紀尾井ホールの「明日への扉」シリーズ。

今回は、在京オケ金管セクションの進境ぶりを象徴するような素晴らしいリサイタルでした。

ホルンの日橋辰朗といえば、熱心なコンサートゴアーには、すでにお馴染みの顔といえるのかもしれません。

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1988年生まれ、2010年東京音大卒業ですが、在学中から小澤征爾音楽塾オーケストラメンバーとして活躍。卒業後は、木曽音楽祭、水戸室内管、東京・春・音楽祭など八面六臂の活躍で、日フィルを経て昨年4月に読響に入団、首席奏者に就任しています。

日本のオーケストラの金管セクションは、そのレベルがなかなか向上せず、特にホルンは肝心なところで音を外したり落としたりと多くのファンを嘆きいらだたせてきていました。ところがここ数年、地滑り的な若手の進出と世代交代が進み、著しい進境ぶり。そういう金管セクションの新世代を代表するホルン奏者のひとりが日橋だといえるのです。もはや、新人とか新進気鋭という存在を超えた活躍ぶりです。

ところが、いざソロ・リサイタルとして登場した日橋は、いかにも初々しい。愛敬のあるにこやかな笑顔で、そのフレッシュさは新人そのもの。といっても、いざ演奏が始まるとその多彩な音色、強弱のレンジの広さと安定した音程に圧倒されます。しかも、表情は柔和なまま、その余裕たっぷりなことといったら。

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そのことは、シューマンのような代表的なホルンのレパートリーであっても、グラズノフなどの珍しいピースであっても変わりません。驚いたのは、現代曲のキルヒナーの作品。第1曲「ラメント」では、ピアノの接するように立ち、ピアノの弦に共鳴させるという不思議なサウンドを聴かせてくれました。ピアノは一切鍵盤に触れず、ただペダルを踏み込むだけ。上蓋に向かってホルンが吹くと、しばらくワーンというような不思議な共鳴音が聞こえます。そういう効果とホルンのストップを巧みに使い分けたこだまのような効果がとても面白い。

ピアノの松岡美絵さんも音のソノリティが美しく、素晴らしいテクニックと音楽性です。しかも、主役である日橋からほんの一歩下がったところでうまくホルンとの音色バランスやダイナミックスの間合いをとっていて、ただの伴奏ピアニストではないと感服しました。

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後半は、シュトラウス父子(といってもウィーンのほうではなく、バイエルンのほう)の二曲とやはり現代チェコのパウエルの作品。父シュトラウスの作品というのはとても珍しくもちろん初めて聴きましたが、作曲家としてもなかなかの実力です。ワーグナーが嫌いで本人を目の前にして平気で小言を言った父フランツですが、ワーグナーとしてはバイエルン宮廷歌劇場随一のこのホルン吹きのご機嫌を損ねないよう気を使ったというのもよくわかります。

ホルンの作品といえば欠かせない名曲がプログラムにないことをいぶかっていたら、何とアンコールでやってくれました。

とても新人とはいえない日橋のホルンです。「明日への扉」の「明日」とは、日本のオーケストラの「明日」のことではないでしょうか。その「扉」が開いて清々しい風が入ってきたような昂揚感がありました。



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紀尾井 明日への扉第10回
日橋辰朗(ホルン)
松岡美絵(ピアノ)

2016年1月22日(金) 19:00
東京・四ッ谷 紀尾井ホール

ビュッセル:カンテコール 変ロ短調 Op.77
シューマン:アダージョとアレグロ 変イ長調 Op.70
グラズノフ:夢想 Op.24
キルヒナー:3つの詩曲

R.シュトラウス:アンダンテ ハ長調 AV58
F.シュトラウス:シューベルトの「あこがれのワルツ」による幻想曲 Op.2
パウエル:ホルン協奏曲

(アンコール)
サン=サーンス:ロマンス op.36

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