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2015年10月01日19:03

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三浦友理枝 ラヴェル・ピアノ作品全曲演奏《第2夜》

三浦友理枝がラヴェルのピアノ作品全曲演奏に挑んだ、その第2夜に行ってきました。

残念ながら第1夜は行けなかったのですが、その果敢な挑戦にふさわしいとても高い美意識に満ちた素敵なラヴェルでした。

三浦さんは、NHK・FMの「きらクラ!」で産休中の遠藤真理さんの代行でふかわりょうさんの相方を務めています。先日の放送では、今回の「ラヴェル全曲演奏会」についてもいろいろ触れておられました。

ラヴェルというひとはピアノ曲の傑作をたくさん残していますが意外に寡作で、「全曲演奏」と言ってもちょうど2回のリサイタルでぴたりと収まる。CDやリサイタルで取り組んでいるうちに気がついてみればレパートリーとして全曲をカバーするのにあとひと息というところまで来ていた。全曲演奏の企画は、そんな三浦さんのレパートリーと資質を見込んだフィリアホール側の提案だったそうです。

最初は、2夜連続リサイタルの提案だったそうですが、難易度の高い曲の多いラヴェルだけにさすがにそれは負担が大きく自信がなくて間を空けての企画となったとか。しかも、今回、三浦さんにとって一人の作曲家の全作品全曲をまとめて演奏するというのは『人生初の大チャレンジ』なのだそうです。

三浦さんにとってラヴェルというのは、「ロマン派のように分かりやすい情熱ではなく、印象派は内に秘めた情熱。それを表現するのが大切でかつ、難しい」とのこと。もうひとつは、斬新で新鮮な色彩にあふれた和声の響き。もともと「この時代のフランス音楽の和声感はとても好き」で、子供の頃は「何か面白い響きはないかと色々鍵盤上で模索」するときの参考にしていたそうです。それが自分の「原点」だと、別のインタビューでも語っています。
http://www.philiahall.com/html/interview/Interview150704.html

ピアノはヤマハ。ホールに入ると調律がずっと続いていて、それはほとんど開演予定時刻ぎりぎりまで続いていました。とても入念な調律。そのヤマハのピアノの音が素晴らしく綺麗。
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最初は、最初期の作品を2曲。「古風なメヌエット」は私の大好きな作品で、デュトワ/モントリオール響のCD(1982年6月)をくり返し聴いていた時がありました。デュトワは、冒頭の斬新な短二音の響きとシンコペーションのリズムで一気に気持ちをとらえます。この冒頭の響きとキレのあるリズムの再生が難しくて、なかなかうまく鳴ってくれなくて悩んだこともありました。ラヴェルは、記念すべき初出版となったこの曲を「古くさい」と自虐気味に切り捨てていましたが、面白いことに最晩年になって思い出したように管弦楽に編曲したのです。やっぱり愛着があったのでしょう。こうしてピアノ原曲で聴くと、そういう青年期の気負いと不器用な思い込み、そこから発散される自己愛みたいなものがとても新鮮に響きます。

前半のメインは「鏡」。

三浦さんのヤマハの音量は中庸で、どんな音階の音でも同質的。トレモロの強弱の変化が見事で、さざ波から透けて見える青い湖底のように透明度の高さと輪郭の鮮烈さがあってとにかくきれい。ヤマハの美質が三浦さんの思うラヴェルと一心同体になって存分に発揮される。最近聴いた若手のラヴェルとしては萩原麻未さんの印象が強いけど、あの小悪魔的な魅力のラヴェルと三浦さんのラヴェルとはとても対照的。確か萩原さんのドレスは赤だっと思うけど、三浦さんの今日のドレスは青。赤と青の違いぐらい違っていて、それぞれにすごく魅力的。

開演前と違って、休憩時間の調律はちょっと触れて確かめるだけというように短時間でした。それだけ事前の調律が成功していたということと、三浦さんのタッチがとても正確で静かということなのだと思います。実際、「道化師の朝の歌」であってさえ、振りかぶって鍵盤を叩くようなことも、体重をかけて筐体にのしかかるようなことも一切ないし、ペダルの踏み込みやダンパーの上下などのメカニカルな気配がまったく感じられません。そういうことが音の美感にとても素直に現れているのです。


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後半の劈頭は「亡き王女のためのパヴァーヌ」。

ラヴェルとドビュッシーの違いは、ドビュッシーがピアニズムそのものだったのに対してラヴェルはピアノはあくまでも手段とか媒体だったこと。ラヴェルがどんなピアノ曲からも何ら違和感なく見事なオーケストレーションを実現させたのに対して、ドビュッシーは傑作であればあるほどその曲はピアノから寸分も離脱することはありませんでした。三浦さんのピアノは、そういうオーケストラ版への連想を触発するような均質なレガートや、ピュアで静謐なペダルの持続音とともに、ピアノ独特の明晰な響きと短音のテクスチュアを響かせてとても綺麗。

後半のメインは「クープランの墓」。

「プレリュード」が始まると、これも管弦楽版がすぐに脳内に想起されて、その連想を楽しんでいる自分があるのですが、編曲されなかった2曲目「フーガ」からはどんどんとピアニズムの世界に没入していきます。そして「メヌエット」を弾き終えて、ふっと一呼吸置いてからいよいよフィナーレの「トッカータ」。超絶技巧のピアニズムの世界。さすがのラヴェルもこれを管弦楽に置き換えることはしませんでした。複雑な入り組んだ骨格のタワーを一気に空に向けて組み上げていくような演奏。

演奏を終えて立ち上がった三浦さんの表情にはさすがに疲労感が漂っていて、しかも、最後の山も越えたという満足感が浮かんでいました。でも、汗一つかいていません。指揮者には、ふた通りあって、全身を使って指揮台ではね回り汗だくだくになるタイプと、流麗なタクトさばきで終始冷静沈着で汗ひとつかかないタイプ。三浦さんは、指揮者に例えれば、後者のタイプなのでしょう。

このラヴェルは、殺気だったものでも、人々を熱狂させるようなラヴェルでもなく、とても穏やかで満ち足りた幸福感を与えてくれるものでした。そんな感慨にひたりながらシアワセな気分で帰路につきました。








土曜ソワレシリーズ 第251回
三浦友理枝
ラヴェル・ピアノ作品全曲演奏《第2夜》

2015年9月26日(土) 17:00

前奏曲
古風なメヌエット

組曲「鏡」
蛾
悲しい鳥たち
海原の小舟
道化師の朝の歌
鐘の谷


亡き王女のためのパヴァーヌ

グロテスクなセレナーデ
ハイドンの名によるメヌエット
ボロディン風に…
シャブリエ風に…

組曲「クープランの墓」
前奏曲
フーガ
フォルラーヌ
リゴドン
メヌエット
トッカータ
 
<アンコール>
ハバネラ形式の小品
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