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2015年08月14日18:01

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ドイツの規律と寛容(ドイツ音楽三昧旅行 その1)

ドイツの鉄道は、いったいどうなってしまったのでしょう。

かつては、寸秒も違わず定刻になると音もなくホームを離れていくというイメージがあったドイツの鉄道ですが、もう堕落そのもの。今回の夫婦でのドイツ音楽三昧の旅は、鉄道を最大限に使ったのでほんとうにひどい目に遭いました。特に前半でずいぶんと神経をすり減らしへとへと。あの最後の最後での大失敗に結びついたのかも…。

フランクフルト空港は駅と直結しており、IEC(インターシティエクスプレス=都市間特急列車)も停車するので鉄道への乗り継ぎが抜群に便利な駅です。

まず、切符売り場に行って「ジャーマンレイルパス」の発効手続き。この「レイルパス」はドイツ鉄道などが乗り放題。有効期間(1ヶ月)なら7日分の一日乗り放題というパスを買いました。一日毎に乗り放題となるもので、移動のない日は使わないということが出来るので効率的です。この日は、空港駅から中央駅に行くだけなので発効手続きだけです。

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Sバーン(近郊線)に乗って中央駅に到着。駅前のホテルにチェックイン。到着したのは夕方なので、この日は美術館など市内散策を楽しみました。この日は初日なので多少まごつくこともありましたが、全てが想定の範囲内で順調。

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ところが…いざ鉄道に乗ってみると…

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とにかく20分や30分の遅延は当たり前。しかも、始発なのにのっけから定時出発などどこ吹く風で、出発から30分遅れなので到着する頃には40分遅れになってしまいます。

滞在第一日目は、ザルツブルクのマチネーとミュンヘンオペラのはしごという強行スケジュールでしたが、さっそくやられてしまいました。まず市内のSバーンが週末は工事中ということでまともに動かない。単線運行でホームが違っていたり途中駅で打ち切られ、予定のRE(リージョナル・エキスプレス=ローカル急行)に乗り遅れ。1時間後のREに乗らざるを得ませんでした。まずこれで1時間みていた余裕を使い果たしました。これでもまだぎりぎり間に合うかと思っていたので、10分経っても出発しない電車にイライラ。ようやく出発したと思ったら、途中のプリーン駅でストップ。何でも線路上に人が立ち入ったとか。40分遅れでようやく出発。この時点でコンサート開演に間に合うのは絶望的になりました。ところがこの電車は、ザルツブルクまであと一駅というところで突然打ち切られてしまいました。結局、乗ったのは後続の電車。予定よりも2時間遅い電車に乗ったことになりました。これでも、コンサートの後半に間に合ったのでやれやれでした。

帰りは、この日19時からオペラですので余裕があったのですが、ザルツブルク市内散策などは一切無しでミュンヘンへとんぼ帰り。帰りの電車は何ごともなく無事でした。この時は、途中駅打ち切りだなんてよっぽど不運だと思ったのですが、この後、何度も痛い目に会うことに…。

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さっそくその手痛い仕打ちに合ったのが、バイロイトからの帰り道。バイロイトで宿が取れなかったのでミュンヘンからバイロイトへの日帰りという、これまた強行スケジュールを組んだその帰り道。何しろ「ローエングリン」の終演は21時過ぎですから、タッチの差で予定の電車に間に合わず。こういう時に限って定刻運行です。結局、1時間待ったバイロイト駅からはニュールンベルク行きの最終列車。ニュールンベルクで乗り換えてミュンヘン行きのREに乗ったのですが、深夜の最終列車でまさかの《途中駅打ち切り》!

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こともなげに別の迂回路線でのローカル線への乗り換え案内。結局、ホテルにたどり着いたのは翌日未明の2時頃。ミュンヘンのトラム(路面電車)は終夜運行ですが、寒々とした深夜の中央駅には酒瓶片手の半裸でたむろする若者たちがいてちょっと薄気味悪かった。

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二回目のザルツブルク日帰りでしたが、もうこういうことに慣れっこになってしまいました。それでも、朝、中央駅に着くとただならぬ雰囲気。この日、北ドイツを襲った強力低気圧のせいとかでダイヤは千々に乱れ駅には人があふれかえっていました。本来は関係ないはずのREですが、なかなか所定のホームに列車が来ない。ドイツ語はわからないのですが、「ザルツブルク」のアナウンスとともに人が大移動。その流れに乗ってかなり外れのホームに着くと列車が待っていました。ぼんやりしていたら乗り過ごすところでした。

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この日は、ワグナーを支援したバイエルン王ルートヴィヒ�鏡い罎�りのヘレンキームゼー城に立ち寄り、余裕もあったので30分程度の遅れは想定内。この日は、20:00開演ですのでゆっくりとザルツブルク市内散策と夕食を楽しみました。帰りは、プログラムが比較的短かったのを幸い、拍手もそこそこにタクシーで駅まで急ぎました。この日は、何とかぎりぎりですがその日のうちにミュンヘンのホテルにたどり着きました。

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中間日は、ガルミッシュパルテンキルヘンへ日帰り観光。徐々に遅れが積み重なってきたと思ったら、ここでもまたまた《途中駅打ち切り》の憂き目に。もう腹が立つというよりもあきれ果ててしまいます。駅でホームの間を右往左往。支線で分岐する際の列車切り離しの運行上の理由のようですがマネージメントが出来ていません。

最後は、バイロイト一泊後の最終日。

前夜の大失敗ですっかり気落ちしていた我々夫婦にまたもむごい仕打ち。ニュールンベルクに向かう途中でまたも《途中駅打ち切り》。何とも中途半端な駅での打ち切りで、乗務員も駅舎で電話連絡に躍起。ようやくの案内は、二駅ほど逆戻りしてそこから代行バスが出るという話し。幸い隣席のドイツ人夫婦が流ちょうな英語を話し、とても親切にしてくれたので二人に従ってようよう満員バスに乗り込みました。おかげで運転手の横に立ってアウトバーンを1時間ほど走るという貴重な体験をさせてもらいました。立ち乗りでアウトバーンなどあり得ない話しですが、恐らく落ちこぼれ寸前の我々のためにあのドイツ人夫婦が強硬に掛け合ってくれたのだと思います。おかげで、日本行きのフライトに乗り遅れることなくフランクフルト空港にたどり着きました。もちろん、時間つぶしのつもりだったマインツ観光などそんな気力は残っていませんでした。

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ギリシャ問題をめぐっても、ドイツのひとり勝ちということがよく言われています。最近、出版された書籍などでも「ドイツ帝国の復活」「ドイツ帝国が世界を破滅させる」というようなあざとい副題が踊り、欧州統合のなかでドイツの製造業、金融支配が浸食し、ふたたび反独・嫌独感情が渦巻いているかのような論調が目立ちます。

けれども、ほんとうにそうでしょうか…?

確かに経済的にはドイツひとり勝ちの様相を呈してますが、かつてのドイツの規律は明らかに緩んでいます。こういうドイツ鉄道の堕落は、ドイツ人自身も嘆いていて現政権下で進められた《民営化》の結果だと言っていました。私には、そうでもないような気がします。町や列車には私たち同様の異邦人があふれていて、列車で隣席にいたやせこけた黒人男性も検札が来るたびに席を外してしばらく行方をくらましていました。町も10年ほどまえの清潔さは影をひそめ、ゴミが散らかっている。社会全体にわたって「規律」が緩んでいるのです。かつてのあの干渉的で強烈なまでのドイツ人気質の「規律」が薄まっています。

一方で、ドイツ人の寛容なこと。かつてのような厳格さ、癇癪持ちのような潔癖さは影を潜めています。こんな杜撰な鉄道にもあきらめ顔。あまり腹を立てる様子はありません。そして、私たちのような異国人にもとても親切でやさしい。もともと英語をしゃべるひとは親切でしたが、それがとても日常の生活にしみ通っています。レストランの応対も親切だし、バイロイトの街角で道を尋ねた学生風の若者も親切でした。ガルミッシュキルテンパルヘンのガード下の落書きには「ナチ反対」とあって何だか拍子抜けのような気がしたほど。かつて若い日本人留学生が暴行を受けた話しなど、そういう暗がりの緊張は微塵も感じません。

欧州統合後のドイツは確実に変容しています。ギリシャ問題ではドイツひとりが強硬だとの批判がありましたが、ドイツ的な規律はしばし抵抗したものの結局は押し切られたということではないでしょうか。それほどにドイツは寛容になってきているのだと思うのです。「帝国の復活」「(ドイツが再び)世界を破滅させる」というのは、何だか実感とは違うなぁ。それが、このドイツ旅行での実感でした。

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