mixiユーザー(id:26897873)

2015年03月19日18:16

727 view

大阪弾丸ツアー (その2− 兵庫PACオーケストラ)

椀方さんを訪ねての大阪弾丸ツアーの続きです。

この日に椀方さんをお訪ねしたのは、ユニコーン見参ということもありましたが、かねてからご招待いただいていた兵庫PACオーケストラ(兵庫芸術文化センター管弦楽団)のコンサートに同行させていただくことでした。

会場の兵庫芸術文化センター(PAC=Hyogo Performing Arts Center)は、兵庫県西宮市にあって阪急神戸線西宮北口の駅前にあります。椀方邸から、今度は阪急宝塚線と神戸線を乗り継いでほんの1時間ほどで着いてしまいます。椀方邸の立地がよいのか、会場が交通至便なのか、おそらくその両方でしょうが、とても便利です。

関西圏には、大阪・中之島にザ・シンフォニーホールと新しいフェスティバルホールが軒を並べ、中規模のいずみホールや京都にも京都コンサートホールというようにクラシック専用ホールがひしめいています。ところが椀方さんによると、なぜか、関西圏を訪れるオケやアーティストはこのPACを選ぶことが多く、そのまま京阪を素通りして東京へ行ってしまうそうです。交通の便や席数の適正規模などもあるのでしょうが、運営マネジメント力の差もありそうです。ホールに着くと、入口のロビー、ホワイエなど、そこかしこでコンサート企画、音楽家招聘、集客についての熱意を感じます。

フォト

ホールに入って、まず、感じたことは、木質の柔らかで暖かい雰囲気と音の静かなこと。木で囲まれたステージの眺めは横浜の神奈川県立音楽堂に似た感じですが、実は、それ以上にロンドン交響楽団の本拠地、バービカンセンターの大ホールに共通したものを感じます。

フォト

客席数も2千席とまったく同じ。その響きは、まさに、バービカンのもの。会話していても非常にデッドな響きを感じて、静かで聴きやすく落ち着いた気分にさせてくれるのです。残響時間は、永田音響設計のHPを見ると『2.0秒(満席500Hz)』とありますが、もっとずっと短い感じです。ここはオペラ公演も行うということですので、声が通りやすくできているのでしょう。シューボックス型とは対照的に、幅が広く、座席スペースの奥行きがあまりないところもよく似ています。音の拡がりや届き方など共通のアコースティックの良さを感じさせてくれました。

内壁などインテリアは木質の感触にこだわり、すべてマホガニーの無垢材が使用されているとのこと。マホガニーは導管が大きく柔らかいので、無塗装の無垢材はほどよい吸音性があって、そのことがこの静かな音の響きにつながっているのだと思いました。日本では「残響時間が長い=音響が良い」というステレオタイプがありますが、必ずしも残響時間の長さと音響の良さは同義ではありません。むしろバービカンのようなデッドな音響のほうが発音が明瞭で声色の微妙な表情がよく見えて、オーケストラはどんな大音量でも飽和することがありません。

この芸術文化センター専属のPACオーケストラもユニークな団体。楽員はみな若く、しかも、国際色豊か。というのも、このオーケストラはこれから本格的なプロのキャリアを目指す若い音楽家ばかり。35歳以下という条件のオーディションに合格すると、3年間の任期で給料と住居が保証されるコアメンバーとなります。佐渡裕音楽監督のもとで徹底的にトレーニングを受け、室内楽などのアンサンブルも含めて様々な活動の機会を与えられる、いわばプロ養成のアカデミー・オーケストラ。

この日のプログラムは二曲。いきなり最初から、ラフマニノフの3番のコンチェルトという難曲です。ピアニストにとって超難曲であることは間違いありませんが、それだけにオーケストラにとっても「怖い」名曲です。この日のソリストは技巧というよりその美貌のほうに「超」をつけたくなるリーズ・ドゥ・ラサール。

フォト

その新鮮極まりない音色や響きと感性豊かな音楽性は相変わらず。華麗でロマンチシズムあふれるピアノでいかにもラフマニノフらしいのですが、決してスラブ情緒の俗っぽさがありません。ところが、それがとてもスラブ情緒にあふれていたことは、アンコールでドビュッシーを弾いたとたんにがらりと雰囲気が変わったことで気づかされました。これに較べるとオーケストラはどうしても単調に聞こえてしまうのです。それでもそのアンサンブルやテンポ変化の柔軟さと追随の正確さという技術力は、東京のオーケストラを上回るものがあります。

後半のシベリウスも、出だしこそややもたつきましたが、尻上がりに調子を上げ終楽章では一気に盛り上がりました。金管群の実力は相当のものです。ホルンは、ラフマニノフでもカデンツァに呼応するソロや直後の入りの部分もきれいにクリアしてましたし、このシベリウスでのトランペット、トロンボーンの輝かしい斉奏は胸のすく思いがします。その点で、弦楽器群はやや烏合の衆という観が拭えず、音量も負けてしまいます。ごまかしのきかないこのデッドな響きのホールで金管に負けない音量を弾くためには、ひたすらにボーイングと緻密なアンサンブルを鍛えるしかありません。出入りの激しいアカデミー・オーケストラですが、ここでの体験は将来本格的なオーケストラプレーヤーとして活躍する時の糧となるにちがいありません。

指揮者のデスピノーサにはとても感心しました。イタリア人なのに、ロシアや北欧の音楽に大変な音楽的見識と情熱を持っていて、特にシベリウスなどはプラチナのような光芒を放っていました。アンコールで、耳慣れないストリングスオーケストラ曲を披露。ショスタコーヴィチだろうか?と思ったら、なんとデスピノーサ自身の曲と聞いてびっくり。日本初演だそうです。ショスタコーヴィチへのオマージュとのことで、私の聴覚も当たらずといえども遠からずというところでした。

とても価値ある体験でした。椀方さん、ありがとうございました。



フォト

兵庫芸術文化センター管弦楽団 第77回定期演奏会
ラフマニノフ&シベリウス ロシア・北欧の調べ


2015年3月14日(土) 15:00
兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール

指揮/ガエタノ・デスピノーサ
ピアノ/リーズ・ドゥ・ラ・サール
管弦楽/兵庫芸術文化センター管弦楽団


ラフマニノフ : ピアノ協奏曲 第3番 ニ短調 op. 30
 (アンコール)ドビュッシー「前奏曲集・第1巻」より第4曲「音と香りは夕べの大気に漂う」
シベリウス : 交響曲 第2番 ニ長調 op.43
 (アンコール)デスピノーサ「アンダンテ・フォー・ドミートリ」
        (ショスタコーヴィチへのオマージュ)日本初演

21 3

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する