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2024年12月13日15:56

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紳士のたしなみ (井上玲リコーダー・リサイタル 紀尾井 明日への扉)

若手演奏家を紹介する紀尾井ホール「明日への扉」シリーズ。新進気鋭の演奏家の登竜門として知られる存在ですが、そこへリコーダー奏者が登場するのは、昭和にまで遡るこのシリーズでもおそらく初めてのこと。

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井上玲さんは、東大の美学を卒業して東京芸大大学院に進んだ変わり種。専攻は音楽史ですが、その傍らリコーダーを山岡重治氏らに学び内外の古楽コンクールで数々の入賞を重ねてきているという。まあ、マニアックなリコーダー・オタクの不思議君というところでしょうか。

その井上さんによると、リコーダーというのは、18世紀初頭のロンドンで繁栄を謳歌した楽器。世界でいちはやく市民革命を成し遂げ、産業革命の端緒をつかみかけていたロンドンの紳士たちは、音楽を楽しみ、ふと懐から1本のリコーダーを取り出して、お気に入りのオペラのさわりなどを披露するのがジェントルマンのたしなみだったのだとか。

そのロンドンで大人気だったのが、コレッリとヘンデルなんだとか。

そういえば、私も高校生時代にリコーダーにはまっていた頃、初級・中級者用の楽譜といえばコレッリとヘンデルばかり。加えてファン・アイクとテレマンというのが定番。なるほど、そういうことのルーツはロンドンだったのかと合点。この日のメインのひとつであるコレッリの作品5も、あの頃のリコーダー学習者にとってみればリコーダーの曲そのもの。もともとはヴァイオリンだというのは後で知るという具合でした。

さすが音楽史家らしく、プログラムも教養あふれていて古い流儀を踏まえた組み立て。耳慣らしと前口上を兼ねたプレリュードと序曲で口切りをして、最後をグラウンドで締めるという本家本元直伝のメニュー。メインディッシュは、今夜のテーマであるコレッリとヘンデルのソナタ。

後から数えたほうが早いという席なので、さすがに遠い。ところが、かえって、紀尾井ホールは音が良いとつくづくと実感。

遠いので、小さな音量のリコーダーの微妙な息づかいといったニュアンスや音色変化はわかりません。ところが、かえって改めてこのホールの響きの良さに思いが至るという具合。リコーダーは、やはり、教会など残響豊かな空間でこそよく響きます。とはいえ、あまり大きな空間では拡散し過ぎてしまう。この紀尾井ホールだと、澄んだ音色はいささかも濁らず曇らず明瞭で、細かいアーティキュレーションや粒だったスケールやアルペジオ、装飾音などの指使いの心地よさがよく伝わってくるのです。

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それをいっそう引き立てたのが、ハープシコードとヴィオラ・ダ・ガンバの通奏低音の強力な助っ人二人。

�彪舛気鵑蓮∨楙譽茵璽蹈奪僂拍�々たるキャリアを重ね、しかも、F.クープランのクラブサン奏法に関する著書の新訳も出版されている。

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ヴィオラ・ダ・ガンヴァの森川さんは、まさに、本場ロンドンで超一級のヴィオール・コンソートの一員として長年活動されていたひと。一昨年、帰国したばかりであまり知られていないかもしれませんが、その実力は大変なもの。とにかくヴィオラ・ダ・ガンヴァは、実際の演奏となるとなかなか聴く機会に恵まれない。その音色にしろ、音量にしろ、リコーダーとは絶妙のバランス。後半のヘンデルのソナタのアンダンテで弾かれたピッツィカートの音色など、聴いていると天にも昇る心地がするほど。

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プログラム最終盤でのフォリア。

まさにこれこそリコーダー曲の名品中の名品。もうヴァイオリンよりも断固リコーダーの方が良い。学生の頃、フランス・ブリュッヘンが登場して、この曲でリコーダー・ブームに火をつけ、「ラ・フォリア」の一大センセーションを起こした。

もう、ほんとうに天国的に幸せな夜でした。





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紀尾井 明日への扉41
井上玲(リコーダー)
2024年12月12日(木) 19:00
東京・四ッ谷 紀尾井ホール
(1階 18列11番)

�彪前ー�子(チェンバロ)
森川麻子(ヴィオラ・ダ・ガンバ)

バベル:チェンバロのためのプレリュード
ヘンデル:歌劇《リナルド》HWV7a〜序曲(リコーダー編曲版)
ヘンデル:チェンバロのためのプレリュードHWV567
コレッリ:ヴァイオリン・ソナタ第1番 op.5-1(リコーダー編曲版)
ヘンデル:オーボエ・ソナタ ヘ長調 HWV 363a(リコーダー編曲版)
ヘンデル:アダージョ(ハープシコード組曲ヘ長調HWV427より)
    :リコーダー・ソナタ イ短調 HWV 362

フィンガー:グラウンド
ヘンデル:リコーダー・ソナタ ニ短調 HWV 367a
コレッリ:ヴァイオリン・ソナタ第12番《フォリア》op.5-12(リコーダー編曲版)
作者不詳:コレッリのソナタ第7番のサラバンダによるグラウンド(リコーダー編曲版)

(アンコール)
ヘンデル:フルート・ソナタニ長調HWV378より 第1楽章アダージョ
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