ベストセラーとなった「まいまいつぶろ」の続編… というよりも二番煎じ、使い回しという感じ。
難産のために麻痺を抱え、字も書けず口も思うように動かせない。廃嫡も噂された九代将軍・徳川家重。その歩く姿やその跡に引きずるような濡れものが残ることから「まいまいつぶろ(カタツムリ)」と陰で揶揄されていた。その言葉は誰も聞き取ることができないという家重の通詞として誠心誠意仕え続けた小姓・大岡忠光の物語。
そういう設定を、もう一度周囲の人物にスポットライトをあてなおした連作シリーズ。
徳川吉宗の生母・浄円院の江戸入りから始まる。孫の不幸を思えばこそ、その廃嫡を願うという祖母の真情。長子継承という神君・家康公以来の訓を一貫して守ろうとする父・吉宗。幕政の停滞を憂い、聡明な弟君・宗武の将軍継承の真正を信じて疑わない老中たち。
連作の狂言まわしの役割は、吉宗によって引き立てられその耳目となる御庭番・青名半四郎というわけだが、今ひとつ、その劇中の存在感が弱い。すべて吉宗はお見通しだったとか、吉宗が密かに幕閣、大奥を繰っていたとかのどんでん返しもない。何のための御庭番なのか…。
各章で焦点のあたる人物もどうにも善悪がはっきりせず、かといってリアリティにも欠ける。ひたすら私心なく献身的に仕え続ける大岡忠光…というのも、なんとなく最後は目出度し目出度しで終わってしまう。なにもかもが中途半端で物足りない。
一度食べて美味しかったものは、二度食べても美味しい。
そういう安心感は満足させてくれるのかも。
まいまいつぶろ 御庭番耳目抄
村木 嵐 (著)
幻冬舎
2024年6月5日第3刷
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