東京・春・音楽祭の室内楽シリーズ。
オール・バルトークという意欲的なプログラムだけれど、内容はそれ以上。バルトークだけというだけでもずしりと重いのに、なかなか実演では聴けない曲目ばかり。いかにも郷古廉と加藤洋之のお二人だけのように見えるけれど、それは最初の第2番のソナタだけ。二曲目からは、さらに在京トップクラスの面々が加わって多士済々。
コンサートの標題には「血と氷」とあるけれど、どういう意味なのかは不明。確かに、民族の血が騒ぐというような意味なら、バルトーク全般に言えるかも知れないけど、「氷」というのは何だかよくわからない。郷古&加藤二人だけのリサイタルに見えてしまうことといい、ちょっとネーミングのセンスを疑ってしまう。
1曲目のヴァイオリン・ソナタは、バルトークの気負いのようなものが勝っていてちょっと取っつきにくい。一連の弦楽四重奏曲もそうだけれど、これがかつてのバルトークの室内楽のイメージでした。それにしても、これだけの複雑な曲をバリバリと弾きこなし、深みも感じさせるお二人の力量には感嘆するばかり。郷古のストラディヴァリウスもさすがの音色。
休憩後の2曲目は、滅多に聴くことがない。でも、これがとても新鮮。自分にとってバルトークは、現代音楽の難解さから、親しみやすくしかもエキゾチックでなおかつ土臭い…そういう魅力へと変遷してきているけど、これはそういう魅力に溢れていた。郷古が曲順を間違えて弾き直したり、弱音器を落として長原が拾ってあげたりと、ちょっと強面の貴公子の郷古のお茶目なところも嬉しい。これだけの曲数に、いささかも集中力を切らさない客席も天晴れ。それだけお二人の演奏が素晴らしかった。
この日は、二回の休憩が入ります。編成が色とりどりでステージの配置換えや調整が大変。。特に最後の曲は、ピアノ2台と二人の打楽器奏者のソナタというもの。まったく初めての体験でこんな曲があることすら知りませんでした。これこそ、二十世紀の作曲家であり、民族主義作曲家というバルトークの二重性の魅力がてんこ盛り。実に楽しい。
いつもながら、こういうプログラムに欠かせないピアニストとして、津田裕也教授がやっぱり登場。東響と読響の打楽器奏者も加わっての大名演となりました。オーディオ好きとしては、大太鼓や銅鑼の低音の凄みにちょっとのけぞりました。大ホールでは、オーディオ的に誇張されたほどに低音は目立たないのですが、小ホールの小さな容量と距離感で聴くと、グランカッサに空気が揺さぶられ、タムタムの波に飲み込まれる感覚が確かに感じられるのです。二人の打楽器奏者が互いに入り乱れて奏するアクションもこれまた打楽器の視覚的魅力で退屈しません。
珍しく同道した家人も楽しんだ様子。感想をよく聞いてみると、どうも一番のお目当ては長原幸太だったらしい。
東京・春・音楽祭
郷古 廉(ヴァイオリン)&加藤洋之(ピアノ)
2022年4月14日 (金) 19:00〜
東京・上野 東京文化会館小ホール
(I列 26番)
ヴァイオリン:郷古 廉、長原幸太
ピアノ:加藤洋之、津田裕也
打楽器:清水 太、西久保友広
バルトーク:
ヴァイオリン・ソナタ 第2番 BB85
2つのヴァイオリンのための44の二重奏曲 BB104(*)
2台のピアノと打楽器のためのソナタ BB115
(*)曲目と当日の演奏順
第1曲 からかいの歌 I. Parosito
第6曲 ハンガリーの歌 VI. Magyar Nota [1]
第21曲 新年のあいさつ XXI. Ujevkoszont? [1]
第34曲 かぞえ歌 XXXIV. Szamlalo Nota
第7曲 ワラキアの歌 VII. Olah Nota
第13曲 婚礼の歌 XIII. Lakodalmas
第23曲 花婿の別れ XXIII. Mennyasszonybucsutato
第32曲 マーラマロシュの踊り XXXII. Maramarosi Tanc
第8曲 スロヴァキアの歌 VIII. Tot Nota [2]
第10曲 ルーシの歌 X. Ruten Nota
第11曲 ゆりかごの歌 XI. Gyermekrengeteskor
第33曲 収穫の歌 XXXIII. Ara taskor
第19曲 おとぎ話 XIX. Mese
第4曲 真夏の夜の歌 IV. Szentivaneji
第26曲 からかいの歌 XXVI. “Ugyan Edes Komamasszony…”
第14曲 枕の踊り XIV. Parnas Tanc
第3曲 メヌエット III. Menuetto
第24曲 面白い歌 XXIV. Trefas Nota
第2曲 五月柱の踊り II. Kalamajko
第36曲 バグパイプ XXXVI. Szol a Duda
第17曲 ハンガリーの行進曲 XVII. Menetel? Nota [1]
第18曲 ハンガリーの行進曲 XVIII. Menetel? Nota [2]
第12曲 干し草の歌 XII. Szenagyujteskor
第20曲 リズム歌 XX. Dal
第25曲 ハンガリーの歌 XXV. Magyar Nota [2]
第35曲 ルーシのコロメイカ XXXV. Ruten Kolomejka
第27曲 びっこひきの踊り XXVII. Santa-Tanc
第5曲 スロヴァキアの歌 V. Tot Nota [1]
第43曲 ピッツィカート XXXXIII. Pizzicato
第29曲 新年のあいさつ XXIX. Ujevkoszont? [2]
第30曲 新年のあいさつ XXX. Ujevkoszont? [3]
第31曲 新年のあいさつ XXXI. Ujevkoszont? [4]
第9曲 遊び歌 IX. Jatek
第36曲bis. 36番の変形 XXXVIbis. Sz.Valtozata A36
第15曲 兵士たちの歌 XV. Katonanota
第37曲 プレリュードとカノン XXXVII. Preludium es Kanon
第41曲 スケルツォ XXXXI. Scherzo
第22曲 蚊の踊り XXII. Szunyogtanc
第42曲 アラビアの踊り XXXXII. Arab Dal
第40曲 ワラキアの踊り XXXX. Olah Tanc
第16曲 ブルレスク XVI. Burleszk
第39曲 セルビアの踊り XXXIX. Szerb Tanc
第28曲 悲しみ XXVIII. Bankodas
第38曲 ルーマニアの旋舞 XXXVIII. Forgatos
第44曲 トランシルヴァニアの踊り XXXXIV. “Erdelyi” Tanc
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