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2019年07月04日09:43

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ミューザ川崎のオルガン(ランチタイムコンサート)

大規模修繕工事のために約半年間休館していたミューザ川崎シンフォニーホールが、この7月1日にリオープンしました。その日は、15周年となる開館記念日(ミューザの日)でした。

大規模修繕工事は、主に設備の更新工事で以下の内容となります。
(1)PA用スピーカーの入れ替え
(2)舞台音響設備のワイヤー類の交換
(3)舞台セリのメンテナンス
(4)舞台照明設備の入れ替え
(5)その他

このようにホール音響そのものを変更させるようなものではないのですが、最後には、改修によってホールの音響が変化していないかどうかの確認も行われたそうです。ステージ中央に多面形(全方向指向)のスピーカーを設置し、特殊な信号を全方向に発生させ、客席に設置したマイクで信号を測定、残響時間などを解析したとのこと。さらには、このホールをフランチャイズとしている東京交響楽団による試奏も行い、ホールの響きが以前と変わらないことを確認と、周到な確認を行っています。

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この工事期間中にもうひとつ重要な改修が行われました。それはオルガンの音色を調整する「整音作業」でした。この日のオルガンコンサートは、そのお披露目ということにもあたるのです。

演奏に先立ってプレトークがありました。

演奏者でありホールの音響アドバイザーである松居直美さん、ホールオルガニストの大木麻里さんのお二人に加えて、オルガンの整音作業に当たられた横田宗隆氏が登場し、実際の作業内容や整音の狙いについてお話しがあって、とても興味深いものでした。

ミューザ川崎のパイプオルガンは、パイプ本数5248本、ストップ数71と日本で指折りの大規模なオルガンですが、今回の整音では4ストップが調整されました。数は少ないのですが、パイプ本数では1000本のパイプが調整されたそうです。

では、今回の整音のねらいは何なのか?

そのことを横田さんが語ってくれます。このオルガンの製作は、スイス・クーン社によって行われました。ヨーロッパの製作者は、当然のことながらヨーロッパの歴史の積み重ねの上に立っています。そのヨーロッパのオルガンは教会の歴史そのもの。コンサートホールのオルガンは、それに較べると近代になって建設された大ホール備え付けのオルガン。

一方で、日本にはそういう歴史はありません。日本では、大教会や大聖堂で演奏されるために作曲されたオルガン曲であっても、コンサートホールで聴くことがほとんどです。ところが、ヨーロッパの製作者は、ホールのオルガンとはオーケストラ等と共演するものと決めてかかってしまうそうです。ミューザ川崎のオルガンには、オルガンだけのコンサートにふさわしい音色としては不満が残るものとなっていたそうです。

横田さんの例えがとてもわかりやすかったのですが、古楽器であるチェンバロはオーケストラと競演するとオーケストラに溶け込みチェンバロそのものの音は聞こえにくくなってしまいます。近現代に発達したピアノは、それに対して音が浮き立つ。チェンバロは倍音豊富で、ピアノは基本が強い。そういう違いがあるというのです。

4つのストップのうち、ひとつはパイプが1列で本数は少ないのですが1本1本が大型。残りの3つは背後にあって小さなパイプの集まり。低音パイプとうまく融合するようにそのパイプの組み合わせ(コンポジション)を替えるというのが作業のひとつ。

さらにパイプそのものも1本1本音色を調整します。笛のように歌口のスリットの形状や上唇と下唇の間隔などを細かく調整する。歌口には側板のようなものもあって基音と倍音のバランスを調整していますがこれも見直して取り外すなどの変更を行う。ミリ以下、十分の1ミリレベルの作業を積み重ねていく。それで音色が大きく変わるそうです。

そんなお話しを聞いてから、いよいよオルガンの演奏です。

ほんの二、三回しか聴いていないのではっきりとした記憶はありませんが、明らかに明快で快活な音色。低音も明瞭度が増しました。全体にはっとするような色彩と迫力が押し出してくるようなサウンドで、音色の各々の個性がくっきりと立つ響きです。聴いた席が、前回の1階席ではなく2階の中央前列ということもあるのでしょうか、低音が滝壺のように充満するという感覚ではなくて、ストレートに飛んでくるような明瞭な低音です。

この日のテーマは「テ・デウム」

テ・デウムというのは、神への感謝をこめた賛歌です。もともとは聖歌ですが、17、18世紀には戦勝などの国家的な祝賀催事に演奏された音楽です。この日は、リニューアルと開館15周年を祝う「祝祭のハーモニー」というわけです。改修されたオルガンの明快で厚みのある堂々としたハーモニーは、それにとてもマッチしていました。

最後には、お二人がステージ上のコンソールに座って連弾による「マイスタージンガーの前奏曲」です。オルガンの連弾というのは初めての体験ですが、大変な迫力と天まで突き抜けるようなハーモニーがホール中に響きわたり、フルオーケストラ以上の迫力に思わず陶然としてしまいました。この曲をショルティ指揮シカゴ響で聴いて以来の大興奮です。

アンコールでは、何と4手連弾ならぬ4足の連弾。

ワンコインのランチタイムなのにすごい大人気。楽しいコンサートでした。


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〜リニューアルオープン記念〜
祝祭のハーモニー
ランチタイムコンサート

2019年7月3日 12:10(プレトーク 11:40)
神奈川県川崎市 ミューザ川崎シンフォニーホール

パイプオルガン:松居直美、大木麻里

M.シャルパンティエ:「テ・デウム」より前奏曲
D.ブクステフーデ:テ・デウム ラウダムス BuxWV218
C.トゥルヌミール(M.デュリュフレ版):「テ・デウム」による即興演奏
R.ワーグナー(メルカート編):ニュールンベルクのマイスタージンガー「前奏曲」

アンコール
R.ロジャース(近藤岳編):ドレミの歌
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