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2018年03月13日16:47

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「旅人の夜の歌――ゲーテとワイマル」(小塩節著)読了

20台の若さでヨーロッパ文壇の新星としてもてはやされたゲーテは、ワイマル公国の宮廷に懇請されて同国の行政官となり長くこれに関わりワイマールの街に骨を埋めることになる。

その若きゲーテが、宮廷への任官に悩み、そして、小国とはいえ一国の政治に奔走する喧噪の日々のなかで、その思いを託した二編の同名の詩「旅人の夜の歌」をめぐって、日独交流に尽力してきた著者のゲーテとワイマールの街への深い愛着と洞察を書き綴った私的なエッセイ。そこには領邦に分封されていた時代から、ナチスの強制収容所へと至るドイツ文化深層の心象をもみずみずしく描き出している。

行間から、著者のゲーテやワイマールにまつわる私的な体験を愛おしむ気持ちがあふれでる。それだけに同じテーマやエピソードがくり返し現れ、論考としてのまとまりには欠くが、文章は飾り気がなく気持ちが直截に伝わってくる。特に、最終章の「ブーヘンヴァルト収容所」は、衝撃を受けた。ヒトラーはワイマールをこよなく愛したという。

ナチによって各地に設立された強制収容所では、ユダヤ人約600万人、非ユダヤ人が少なくとも50万人が虐殺された。ワイマール郊外の施設内には「ゲーテの槲(かしわ=オーク)と呼ばれる樹齢500年の古木の切り株が今も残っているという。著者は現地を訪れた際の格別な感慨を語り、生き残った人により戦後間もない頃に公刊された証言などを丹念に掘り起こし私たちの胸を深く打つ。そこで人々が地獄の底でうめくようにささやいたのはゲーテの詩『気高い人間よ 人を助け、善良であれ…(「人間の限界」より)』だったという。

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気の毒なことにゲーテからは冷遇されたシューベルトは、この2つの詩にも曲をつけている。著者は、文学者らしい詩の韻律の分析に続けてシューベルトの作曲解読も行ってくれている。歌というのは、詩の持つ文学的な意義とともに子音や母音という音の質感やイントネーションと旋律、アクセントとリズム、心情に呼応する強弱などについてきめ細かく分析を加えている。

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シュタイン夫人とのプラトニックな交際、おびただしい数が残された夫人宛の手紙、あるいは、ほんとうの恋文の宛名人は母后妃アンナ・アマーリアだとの新説をめぐっての話しなどくり返し語られるが、これもそれも著者のワイマールへの愛着でありゲーテへの賛歌なのだと思う。

著者の知識・見識と日独交流の経験、歴史に対する思索がこめられた良書だと思う。



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旅人の夜の歌――ゲーテとワイマル
小塩 節 (著)
岩波書店
7 2

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