孫台風は、正月も、もっぱら「おかさんといっしょ」に夢中。特に危害を与えることなく北方へと抜けて行きました。ちょっぴりさびしいけど、そのかわりオーディオの封印を解きました。
そこでさっそく新春に聴くにふさわしい名曲を選んでみました。
1.宮城道雄「春の海」 ギドン・クレーメル(Vn) 吉野直子(ハープ)

お正月の曲としては定番中の定番です。尺八と箏のために作曲されましたが、海外では、むしろ、ヴァイオリンで演奏されてからよく知られるようになりました。こちらはヴァイオリンとハープの二重奏。クレーメルのヴァイオリンが、例によってちょっと独特のアンチ美音系でそれらしくないところが、かえって和曲の面白みを醸しています。
2.ヨハン・シュトラウス�祇ぁ崕佞寮次廖.�ャスリーン・バトル カラヤン/VPO

これも正月恒例のウィーン・フィル/ニューイヤーコンサートから。1987年、最晩年のカラヤンがただ一度だけ振ったコンサートのライブ。私にとってはオーディオチェック用でもある名盤中の名盤。FMで今年のライブ中継のエアチェックを聴いた直後にかけてみましたが、あらためてこのディスクの録音の素晴らしさを確認。なんと洗練され磨かれた美の至福に満ちた演奏でしょうか。
3.ヴォーン・ウィリアムズ「ひばりは昇る」 マリナー/アカデミー室内管

通称「揚げひばり」。こちらは「海」ではなく、緩やかな丘陵が連なるイギリスの早春の田園風景が目に浮かびます。このディスクはアナログからのリマスター盤で2CDのサービス盤ですが驚くほど音が良い。アイオナ・ブラウンのソロの高域が息を呑むほどに美しい。私にとっては、初めて「スピーカーの存在が消える」を体験した記念すべきディスクです。つまり「春から縁起が好い」というわけです。
4.スメタナ「モルダウ」 ラファエル・クーベリック/バイエルン放送響

モルダウ川の上流での清流がまるで雪解け水のせせらぎようにも聞こえます。さしずめボヘミア版「春の小川」というところでしょうか。次第に眼下に大河を望む風景が拡がっていきます。これも飛び切りの名演・優秀録音と言うべきでしょう。バイエルン放送響は、とてもスラブ系の曲がうまくて、ここでもクーベリックのバトンの下、スラブ情緒に満ちた演奏となっています。
5.シューマン「3つの幻想小曲集」 ジャクリーヌ・デュ・プレ(チェロ)

デュ・プレの演奏は、青春の輝きを感じさせます。デュ・プレのデビューともいうべき古い録音ですが、音はとても新鮮。シューマンの独特の暗鬱とした憂愁がかえって春野を駆ける夢見る少女のように清々しく愛おしい。この時、彼女はまだ17歳だったのです。ジェラルド・ムーアの落ち着いたピアノのサポートを得て驚くほど完成度の高い演奏です。
6.シューベルト「ます」 アンドレアス・ヘフリガー タカーチ・クヮルテットほか

不思議に新春にぴったり。日本人にしてみれば春に遡上する若鮎を思わせるということでしょうか。ヘフリガーは父親譲りなのか歌曲の伴奏をやらせると天下一品。タカーチQも《リーダーシップ無用》というところがあって、そういう五人が互いに互いを立てながらアンサンブルを存分に楽しんでいる。そこがこの演奏の魅力です。『仲良きことは美しきかな』――そういう幸福感が新春にふさわしいというところでしょう。
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