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2016年10月04日12:54

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スカイ島唯一の蒸留所 (スコットランド旅行記 その5)

いよいよ私たちの旅は本番に入ります。

スカイ島は、まさに海のアルプス、山のフィヨルド。夢のような絶景が続きます。

ヘブリディーズ諸島最大の島で、かつて激しい地殻変動を起こした火山の痕跡がむき出しで、海から現れた岩がそのままテーブルように連なり、あるいは山々となって佇立しています。その岩山は激しく削り取られて峡谷をなし、その台地や峡谷、渓流の狭間は荒々しいヘザーや芝草に覆われて緑に彩られていますが、近づくと激しい風に引きちぎられるように揺れていて、空には竜が飛び交うような雲が激しく流れています。

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火山国に暮らす私たち日本人にとって、この激しい地形が火山によるものと言われてもぴんときませんが、なるほどあのメンデルスゾーンが「フィンガルの洞窟」で描写した玄武岩の幾何学的な柱状節理の断崖や波打ち寄せる洞窟が、大きさこそ千差万別とはいえ、あちらこちらにあります。

一方で、山々は激しい渓流で削られ、あるいは、街道を走るとそこがに氷河時代に削り取られたU字谷の真ん中であることに気づくのです。巨人族や神々が山々を争い、邪悪で欲深い小人俗が奥深い谷の洞窟に潜む。そういう英雄伝説が、数億年にわたる地球の歴史を伝えている…そんな不可思議な世界。

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私たちがまずめざしたのは、この島で唯一の蒸留所タリスカー。

その道すがら、このスカイ島が、ウィスキーライターのマイケル・ジャクソンがいみじくも言ったように、まさに「断固たる存在である」ことを知ることになります。

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ちょうど、ポートリーへ向かうA87からタリスカーに向かうA863への分岐点にあるスリガチャン(Sligachan)の石の古橋。岩だらけの河原を囂々と音をたてて滝のように流れる渓流と、立って歩くのもままならないほどの強い風は、スカイ島のほんの初めのごあいさつでした。

高台沿いの街道から海辺の村へと真っ逆さまに落ちていくような道の向こうにタリスカー蒸留所を認めると、私たちの興奮は絶好調。厳しい自然に敢然と立ち向かうような蒸留所の白い建物は、それでいてとてもロマンチック。

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タリスカーは、力強く、スモーキー、海の香りのするアイランダーウィスキーのひとつ。

こういう力強い味わいのアイランダーは、近年、日本でも人気ですが、アイラのボウモアやラフロイグほどには煙臭くはなくて、香りはもっと複雑。ナッツのような香りとともにヘザーや海草の香りがあって、微かに海のしぶきのような塩味がします。

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残念ながら写真は禁止とのことでしたが、ツアーでは丁寧に工程の説明がありました。麦芽は、乾燥時にピートで燻した“peated”と無臭の“unpeated”のものを半々にブレンドさせているとのこと。

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むしろ、あの力強く複雑な香りの秘密は仕込み水にあるようで、蒸留所の背後の泉から引いた天然水を使用しているとのこと。蒸留所の水は仕込み水以上に、蒸留したアルコールを冷やして液体に戻す熱交換器(コンデンサー)が消費するのですが、蒸留所の建物のわきを流れ海へと注ぐ川の水は、泥炭地のせいでコーヒー色をしています。

この遠隔の地で操業が続けられた秘密は、もちろんその品質の高さにありますが、海港に立地するということが蒸留所の命だといいます。原料となる大麦を運び、そして製品を消費地に運ぶということで、すべての生命線がこの海に面した立地にあるというわけです。もちろん現在では、蒸留所では、直接、麦芽製造は行っておらず、また、瓶詰めも外部委託となっていますが、モルトスター(麦芽製造工場)からの搬入もボトラーへの搬出も海運に頼っていることには変わりがないわけです。

これほどのへき地でありながら、次々と観光客が訪れて蒸留所ツアーやショップでの買い物を楽しむ人々の賑わいが絶えることがありません。スカイ島の観光スポットとして人気があるのは、「海の王者」とも賞されるシングルモルトの名声とともに、この素敵な蒸留所を取り巻く景観の素晴らしさがあるからでしょう。

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テースティング(私は運転手なので不可ですが)とショッピングを楽しんだ私たちは、さらに、スカイ島の奥へと分け入ります。

(続く)

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