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2014年12月10日23:26

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山崎 伸子 チェロリサイタル with 小菅 優(ピアノ)

私のとても気に入っている小さなスペースのサロンコンサート。

何度か足を運び、楽しいひとときを過ごさせてもらってきたここでのコンサートのなかでもとびきり印象深かったのが、チェロの山崎伸子さんと小菅優(ピアノ)のリサイタル。

山崎伸子さんは、千駄ヶ谷の津田ホールを拠点に毎年チェロリサイタルシリーズを続けておられていて、このアートスペース・オーでのリサイタルはその前哨ともいうべきコンサート。そのシリーズでは、パートナーのピアニストを毎年換えておられるのですが、今回は初めて小菅さんを二度目の相方に選ばれました。そういうことでとても楽しみにしていたコンサート。今回は、マイミクのGRFさんもお誘いしました。

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サロンコンサートというのは、究極の「近接」型のコンサート。ホールのかぶりつき最前列よりも近くしかも同じフロアーの高さですので楽器の響きも豊か。空間容量が小さくホールトーンが無いのが欠点ですが、その分、楽器の胴体の響きが身体を包み込み、時に腹わたをつかまれるような瞬間も実感できます。ピアニッシモや、息づかい、気迫など、究極的な微小音から演奏者のオーラのようなものが伝わってきます。

山崎さんのチェロは、その気迫のようなものがむき出しになって迫ってきます。スラーやロングトーンはあまり使わず、力強いストロークで己の人格をさらけ出しぶつけてくるようなチェロ。ロストロポーヴィチに近いものを感じますが、音色はもっと太くて重い傾向があります。

その分、最初のベートーヴェンの変奏曲は、優雅さに不足して多少ぎこちなさもあって、先日のブルネロの演奏とはとても対照的。バッハの無伴奏も同じで、最近の演奏にありがちな《瞑想》気取りではなく、バッハの難技巧とそれを乗り越える刹那の気迫、そういう壁際にある呻吟とふと現れる啓示のようなものが交錯します。《感性》というよりは《悟性》の世界。そんな山崎さんの正直一途なチェロに胸を打たれます。


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後半のブリテンとショスタコーヴィチも難曲。

山崎さんに、ショスタコーヴィチをやりたいと提案したのは小菅さんだそうです。それならと山崎さんは組み合わせにブリテンを選んだ。どちらもひと昔前は、チェリストにとってはヒマラヤ登山のような難曲でした。互いに挑発し、啓発し合い、そういう対峙を楽しむようなものがそのまま現れるような見事な共演。

ブリテンには、遠くルネサンス期の王朝音楽や土俗的な古めかしい音調と、自由と解放を希求するような前衛とがこだまし合うような不思議な響きがあります。ブリテンで思い出すのは、小菅さんが紀尾井シンフォニエッタ東京との北米ツアーで演奏したモーツァルトの22番のピアノ協奏曲。彼女はそこでブリテンがリヒテルのために作曲したカデンツァにこだわった。あのカデンツァにも古典と現代の不思議なこだまがあった。そういう《果たし合い》のような響き合いが、私の目の前で丁々発止とくり広げられる。

小菅さんのアンサンブルプレーヤーとしての力量にはいつも感心する。先日の水戸での「新ダヴィッド同盟」でもそうだったし、前回の山崎さんとのデュオでもそうだったけれど、彼女のピアノが勇躍動き出すと、ぱっと音楽の見通しが開けてわくわくする。気むずかしい皮肉や意味深な諧謔が複雑に錯綜するショスタコーヴィチでは、そのピアノの転換がまるで歌舞伎の舞台転換のように目に鮮やかで、音楽的様相の色彩の躍動として見事に活きてくる。もちろん小菅さんは二十世紀音楽の名手でもあって、彼女にかかると現代音楽も実に明快なものに変身する。こちらも超のつく難曲だが、山崎さんのチェロは前半の重圧とはうって変わったかのように自由に走り回る。

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演奏を終えて快心の笑みを浮かべるふたりに小さなサロンは大喝采。

アンコールは、やはりショスタコーヴィチ。小菅さんが見つけてきたものだそうだが、もともとは彼が娘のために書いたピアノ小品だけれどもチェロ用にも編曲されてよく演奏されているらしい。ショスタコーヴィチお得意の、子供のおもちゃ箱のような作品が楽しかった。

サロンコンサートと言っても、小屋掛けのプチコンサートのようなもの。GRFさんに果たして気に入っていただけるか不安でしたが、どうやら杞憂のようでした。




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アートスペース・オー 第191回コンサート
山崎 伸子 チェロリサイタル with 小菅 優(ピアノ)

2014年11月24日(月・祝)

ベートーヴェン:「魔笛」の主題による7つの変奏曲 変ホ長調 WoO.46
バッハ:無伴奏チェロ組曲 第5番 ハ短調 BWV1011
ブリテン: チェロソナタ ハ長調 作品65
ショスタコーヴィチ: チェロソナタ ニ短調 作品40

(アンコール)
ショスタコーヴィチ:
 「モデラート」
 「子供の練習帳」より「機械的な人形」
カタルーニャ民謡(カザルス編):鳥の歌

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