コンセルトヘボウで音楽三昧。その第二日目。
オランダは、古楽演奏でもイギリスと並ぶ大国で、レオンハルト、ブリュッヘン、ビルスマなど錚々たる古楽演奏家を輩出しています。それで古楽コンサートをいろいろあたってみたのですがどうもシーズンオフのようで、なかなかよい演奏会がありません。ふと気がつくと同じコンセルトヘボウの土曜日のマチネにこの演奏会があったのです。
朝一番にゴッホ美術館に行きました。人気スポットだけに混雑しますのであらかじめ日本からネットで予約。日時指定になりますがチケット売り場の行列にも並ぶこともなく入口でプリントアウトしたEチケットを提示するだけですぐに入場できます。鑑賞を終えて出てみると入口は大変な行列でびっくり。
ゴッホ美術館の建物は国立美術館とは対照的に前衛的なモダンな建物。別館は、黒川紀章の設計で直線的な本館と対照的な曲線を使ったデザイン。今は改修中で残念ながら入ることはできませんでした。
コンセルトヘボウは、そのゴッホ美術館のすぐそば。緑地とは通りを隔てたところにあります。
イ・バロッキスティは、スイスのイタリア・バロック音楽の泰斗エドウィン・レーラーが創設したルガーノ室内楽協会アンサンブルの系譜を継承するバロックオーケストラ。日本ではまだあまりなじみがありませんが、オランダやイギリスの団体とはひと味違う、イタリアの闊達で華麗なバロック音楽をレパートリーの中心にすえるアンサンブル。リーダーはディエゴ・ファソリス。
オーケストラでは1階席でしたので、このコンサートではあえてステージ後方席を選んでみました。
ステージ後方席の良し悪しは、ホールによってまちまち。音がこちらに向かうのではなく、向こうに行ってしまう、つまり、逆ベクトルの音響、「逆相」の音になってしまいます。そういう「逆相」が露骨に感じられたり視角になってステージがよく見えないなど不都合になりがち。サントリーホールのP席や、水戸芸術館のP・Q列がこういう悪い例にあたりますが、オペラシティのタケミツメモリアルのP席は、なかなか悪くありません。
結論を言ってしまえば、コンセルトヘボウのステージ後方席もなかなか悪くありません。なによりも「逆相」の音にはならず、あくまでも演奏者に近いという臨場感が満点。もちろんコンセルトヘボウの本当の良さは体験できないかもしれませんが、むしろ1階正面席の最前列よりは良好なくらい。コントラバスは後ろ向きですが量感・質感ともに十分で、コンセルトヘボウのステージ床の鳴りがいかに素晴らしいかよくわかります。一番遠くなってしまうヴァイオリンもとてもよく聞こえます。ホール全体がよく鳴り、しかも直接音がよく通るという、このホール最大の特徴が後方席だけによくわかります。不満だったのは、第二ヴァイオリン側の最前列に陣取っていたテオルボの音がさすがにほとんど聴き取れなかったことぐらい。
指揮者のファソリスさんは、例によって階段から登場。私たちのすぐ横をスキンヘッドのファソリスさんが降りて行きました。
コンサートの標題「ディアスポラ(diaspora)」とは、民族の「離散」の意で、元の国家や民族の居住地を離れて暮らす国民や民族のことを言います。取り上げられている作曲家は、ヘンデルを除けばいずれもイタリア人でイタリア国外のドイツやオランダ、ロシアで活躍したひと。ドイツに生まれたヘンデルもイタリアのバロックオペラの系譜を学びこれを範として優れたオペラやオラトリオを作曲し、自身もイギリスへ移住・帰化したひとです。
一連のクリスマス協奏曲は、季節ものでもあり私にも親しみがありますが、ステッファーニやダッロリオは初めて。後半は、打楽器やクラリーノ(トランペット)も加わってにぎやか。イ・バロッキスティは、もちろんピリオド楽器による古楽奏法ですが、ソロを取るふたりのヴァイオリニストを始めひとりひとりが本当に達者でとても魅力的。チェンバロは、通常の通奏低音とは別に、台にのせて少し高く設置したもう1台のチェンバロが指揮者のファソリスさんの前に置いてあって、ファソリスさんは指揮をしたり立ったままチェンバロを弾いたりというスタイル。なんだかジャズのビッグバンドでも観ているように活発で楽しい。
イ・バロッキスティを事前に知っていたわけではありませんが、聴いてみると大変な技量と音楽性に舌を巻いてしまいました。日本にも、ヴァイオリンの寺神戸亮さんやモダンと弾きわける若手の佐藤俊介さん、チェロの鈴木秀美さんなど優れた古楽演奏家がいますが、オーケストラともなるとまだまだだという気がします。ヨーロッパの古楽演奏のレベルの高さと層の厚さをあらためてひしひしと実感しました。
バロック・アンサンブル イ・バロッキスティ(I Barocchisti)演奏会
「イタリア・バロック音楽のディアスポラ」
(DE DIASPORA VAN ITALIAANSE BAROKMUZIEK)
2014年11月29日(土) 14:15
アムステルダム・コンセルトヘボウ
イ・バロッキスティ
指揮者:ディエゴ・ファソリス
アゴスティーノ・ステッファーニ:
組曲「気前のよいオルランド」
アルカンジェロ・コレッリ:
合奏協奏曲ト短調 作品6−8 「クリスマス協奏曲」
ゲオルグ・フリードリッヒ・ヘンデル
合奏協奏曲ト長調 作品6−1
ドメニコ・ダッロリオ:
シンフォニア イ長調
ピエトロ・アントニオ・ロカテルリ:
合奏協奏曲ヘ長調 作品1−8 「クリスマス協奏曲」
アゴスティーノ・ステッファーニ:
劇場音楽からの組曲集
「テベの女王ニオベ」より 「序曲」、リトルネッロ・ティベリーノ、「揺れ」
「運命の勝利」より 「影」
「ヘンリコ・レオーネ」より「シャコンヌ」
「テベの女王ニオベ」より「クレモンテのマルシア」
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