mixiユーザー(id:26897873)

2025年01月18日10:33

61 view

「香港陥落」(松浦 寿輝 著)読了

題名にかかわらず、香港が日本統治下にあった3年8ヶ月のことが語られることはない。日英華の三人の男の酒の上での会話を中心に、陥落直前と回復後の後日譚が描かれるのみ。

外形はなかなか立派だが、中味はまったく空っぽ。

ロンドン駐在のエリート外交官のキャリアからドロップアウトした日本人・谷尾悠介、英国政府直轄の香港政庁の貿易部を定年前に退職したブレント・リーランドは、パーティで顔見知りになった。これに、谷尾に贋造ローレックスをつかませた上海流民の黄海栄が加わり、三人は定期的に酒を酌み交わす仲になる。

いずれも、何やら裏がありそうないわく付きで、その意味ではピカレスクロマンの雰囲気も醸す。谷尾もリーランドもシェークスピアが好きで、その引用句でやり合うとか、香港の裏通りを背景に酒や広東料理の蘊蓄もあって、ハードボイルが好きな読書人の自尊心をくすぐる仕掛けも万全。

さんざん思わせぶりで引っ張っておいて、結末は、三人がそれぞれに友を裏切らなかったというのも拍子抜け。

中味がない……が、面白くないというわけではない。むしろ面白い。――とにかく造りは立派だからなかなかに読ませるし、先へ先へと読み進ませる力もあるから読み飽きない。

エリートビジネスマンの海外出張、機中のお供には最適かも。



香港陥落
松浦 寿輝 (著)
講談社
2023年1月11日 第一刷
7 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する