【日本の方々はウイスキーについて、うんちくを言われる方がたくさんいますが、メーカーは大変迷惑な時もあります、自由にいうのは良いのですがもっとわかった上で話すことが重要だと私個人は思います。】
何年か前に、ネットやマスコミなどの一部で“倉吉事件”と呼ばれる炎上事件があった。
鳥取県の「倉吉蒸溜所」がウイスキーの製造免許を取得し、実際に蒸留設備を導入し蒸留を始めたのが2018年。しかし、免許取得直後から、まるで、自所で蒸留、熟成したかのように表記したウイスキーが売られている。商品のなかには、『18年の歳月を感じるにふさわしい逸品』というマツイピュアモルトウイスキー「倉吉 18年」が『国内製造(モルトウイスキー)』というものまである。実際には海外から輸入した原酒(バルクウイスキー)をブレンドし加水したものに過ぎなかった。
そのことに多くの批判の声があがったが、これに対するメーカー側の開き直りのようなコメントが火に油を注いだ。
冒頭の引用は、実は、その開き直りコメント(その後に削除)。
『何も法律に反したことをしているわけではない』『自分たちだけではなく他社も同じことをしている』というのがその言い分だ。
確かに、ウイスキーの製法を規定する酒税法上は非があるわけではなかった。ひとつの企業によって起こされた問題というよりは、日本のウイスキー業界がその始まりから内包してきた課題や、法律的な問題が表面化したものだった…と著者は言う。
日本ではウイスキーの規定・基準が不明確。日本のウイスキー百年の歴史というのは、模造ウイスキーからスタートした。戦後もウイスキー原酒をいっさい使っていない模造品も売られていたこともある。他国で造られた輸入原酒を国産として使うことにも明確な規定がない。そもそも日本の酒税法は、その名の通り税金を取るための法律。
こうしたことに著者を始めとする業界の人々が疑問を抱き、危機感を募らせ、結集する。
起業を呼び込む事業の魅力、その持続性、成長発展ということも考えると、ことはそう簡単ではない。正義や正統を振りかざしてがんじがらめにすれば、自縄自縛に陥り、ジャパニーズウィスキーはとたんに窮地に陥るだろう。そのことは著者自身も身に沁みてわかっている。〈基準〉づくりまで業界内の議論は尽きることがなかったようだ。
こうした課題に著者はどう向き合ったのか。ジャパニーズウィスキーのブランドはどのように確立し、輸出産業としても存在感を増し、今日の爆発的なブームに至ったのか?それはこの後10年も続くことができるのだろうか?
著者は、こうしたことをウイスキーの製造工程から易しくひも解いていく。この部分はちょっとした〈ウイスキー入門〉になっている。さらに日本のウイスキー百年の歴史を振り返る。ここも「へえぇ〜」が満載。また、本家本元のイギリスがどのような戦略・政策をとって来たのかについても考察する。もちろん〈ジャパニーズウィスキー入門〉として、主な蒸溜所、銘柄とその現状についての紹介もある。
ウイスキー好きにはもちろん、経営、経済問題のテーマとしても、ものすごく面白く読める。
冬の夜長、逸品ウイスキーをちびりちびりやりながら、誇り高い日本産ブランドのこれからの発展と希望について思いをはせるというのも、なかなか乙なものではないだろうか。
ジャパニーズウイスキー入門
現場から見た熱狂の舞台裏
稲垣 貴彦 (著)
角川新書
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