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2023年09月27日13:46

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メンデルスゾーンの賛歌 (紀尾井ホール室内管・定期演奏会)

すばらしい演奏でした。

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大好きなメンデルスゾーンだけれど、その宗教音楽を聴く機会は少なく、この日のプログラムは、いずれも生で聴くのは初めて。最後の交響曲《賛歌》だけは、かろうじて一枚だけCDを持っていますが、前半の2曲に至ってはまったく初めての体験でした。

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交響曲第2番のCDというのは、2005年にリッカルド・シャイーがライプツィッヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のシェフに就任したときの記念コンサートのライブ録音盤(DECCA/UNIVERSAL UCCD-1151)。当時、存在は知っていても聴いたことのなかったこの曲をぜひにと思って求めてものでした。聴いてはみたものの、ちょっとなじめずに今日まで棚から取り出すことはほとんどなかったディスクです。

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今回の演奏がこれほどの感動を生んだのは、やはり紀尾井ホールに音が充満するほどの大音量だったからだと思うのです。それでいて、紀尾井ホール室内管の音は澄み渡っていて、そこかしこにメンデルスゾーンの美しいメロディと正調な造形美が聴き取れる。溌剌として活力をみなぎらせた神への賛歌は、むしろ、宗教宗派を超えた人間賛歌。その高らかなヒューマニズムに感動させられました。

ではなぜシャイーとゲヴァントハウス管のCDには、今ひとつ心が動かなかったのでしょうか?

それは、音響的に大げさで煩いとさえ思えたからです。もちろん私の再生装置の至らなさがあったのでしょうが、大編成のオーケストラと2000席近い大ホールにおける演奏という20世紀的に膨張させられたメンデルスゾーンに違和感があったのだと思います。まさに、紀尾井での生体験でそのことに気がついたのです。ピノックと紀尾井ホール室内管の演奏こそ、聖トーマス教会での初演の感動を伝えるものだと思うのです。場所はコンサートホールですが、豊かな響きと800席ほどの空間。9-9-6-4-2の弦五部と二管編成というのは、まだ創設間もなかったゲヴァントハウス管の規模に近い。20世紀的な膨張した編成による大空間の音響と、メンデルスゾーン当時の編成で力いっぱいに演奏するのとは、まるで違う。

矛盾するようですが、昨今流行の古楽とかピリオド奏法的な小編成への復古的な演奏とも違う。ああいう演奏は、大きくなった音をわざわざ縮小させるところがあります。どうしても、あえて小さくするという縮みこむベクトルを感じさせます。メンデルスゾーンにとってみれば、ベートーヴェンの「第九」にならって、合唱や独唱も入れた大編成による音響、大スケールの音楽を目指す拡大の野心を持っていたはずです。それが彼にとっては、改宗したドイツ・プロテスタントとしての気概であり、決意表白でもあったはずです。おそらく紀尾井ホールにとってもそのレジデンツ・オケにとっても、今回の演奏は最大規模。ピノックは、復古的な演奏姿勢には少しもこだわらず、室内管弦楽団を鳴らすところは目いっぱいに鳴らしていました。そこに大いなるメンデルスゾーンのスピリッツが漲っていたと感じるのです。

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そのことに気づいたのは、代演のソプラノの澤江衣里さんの声。いかにも日本人好みの声質と歌唱。それがソプラノ�汽薀ゥ蝓璽福Ε戰鵐献紂璽淵ぅ討筌謄痢璽襪離泪Ε蹇Ε據璽拭爾箸蝋ヂ仂函5泙並絮蕕任垢�ら本人に科があるわけではまったくないのですが、全体からはやや浮いた感じを受けました。バッハ・コレギウム・ジャパンで研鑽を積んだとあってなるほどと思います。あの団体のバッハは、いかにも日本人の美意識が反映していて、それはまさに《縮み》志向なのです。どんどんと小さく、簡素に繊細さを極め、純度を高めていく。それは同じように復古を目指していたようでいて、いま目の前の指揮台にいるピノックとかアーノンクールとかとはまるで違うのだ…と、いま初めて気がつきました。その違いが、古典派や初期ロマン派の演奏をさせるとひどく露わになってくる…。そんな気がするのです。。

曲冒頭のトロンボーン3本のユニゾンによる基本テーマの鳴らし方に、ピノックの凄味を感じさせます。まったくもって《ドイツ》的。それは、ベートーヴェンの「第九」の人類賛歌にも、マーラーの「第三」のパロディ的引用にも連なっていく。ピノックの意を受けてその音楽をオーケストラに徹底させたのは、やはり、コンマスのアントン・バラホフスキーのリーダーシップでしょう。弦楽パートのアンサンブルの強い透明度があってこそメンデルスゾーンが聴ける。その弦の凜としたアンサンブルが、荒木奏美の歌心あふれるオーボエソロの美音にも結実したのだと思います。

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ピノックの首席指揮者就任には、個人的に懐疑的だったのですが、いまや吹っ切れました。今回の演奏はピノックの存在無くては実現しえなかった素晴らしい演奏でした。オーケストラに新しい風を入れましたね。ピノックで良かった!



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紀尾井ホール室内管弦楽団
第136定期演奏会
2023年9月23日(土)14:00
東京・四ッ谷 紀尾井ホール
(2階C席2列13番)

指揮:トレヴァー・ピノック

ソプラノ�� 独唱:ラゥリーナ・ベンジューナイテ
ソプラノ�尭半Ан傾尚疥ぁ福�)
テノール独唱:マウロ・ペーター
合唱:新国立劇場合唱団

 (*)予定の湯川亜也子急病のため代演

紀尾井ホール室内管弦楽団
コンサートマスター:アントン・バラホフスキー

メンデルスゾーン:
 オラトリオ《 聖パウロ》op. 36 MWV A 14〜序曲
 詩篇第42番《鹿が谷の水を慕うがごとく》op.42, MWV A 15

 交響的カンタータ(交響曲第2番)《讃歌》変ロ長調 op.52, MWV A 18

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