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2021年05月26日00:03

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火の鳥 室内オーケストラ版 (紀尾井ホール管弦楽団定期)

久しぶりの紀尾井ホール管弦楽団定期演奏会。【バレエ音楽特集&ストラヴィンスキー没後50年記念】と銘打ったプログラムですが、これが素晴らしい演奏でした。

1曲目は、モーツァルトのバレエ曲。

いきなり意表をつかれる思いだけれど、歌劇《イドメネオ》に作曲されたバレエ組曲だという。そこから〈シャコンヌ〉と〈ル・グラン氏のパ・スール〉の2曲。バレエ曲だから、そこにも踊り手が入れ替わる場面の転換が次々とあって、そこにいかにもモーツァルトらしいオペラ的でなおかつ祝典のような気持ちが湧き上がるような華やかさがあります。

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このモーツァルトを聴いただけで指揮者がただならぬ才能の持ち主だと感じます。垣内悠希さんは、2011年ブザンソン国際指揮者コンクールの覇者。60年前に武者修行中という出で立ちで飛び入りのように挑戦した小澤征爾さんが一躍名を上げたコンクール。そういえば、前回定期の阪哲朗さんも優勝者のひとり。札幌交響楽団を指揮していたというから、東京ではあまりなじみがなかったのかもしれません。もちろん紀尾井には初登場。

2曲目は、モーツァルトの協奏曲。

バレエ曲ではありませんが、二曲目に協奏曲というプログラミングの型にうまくはまって、しかも、後半の新古典的なストラヴィンスキーとのバランスもぴったり。

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ソロは、このオケのコンミスである玉井菜採さん。こういう晴れ姿は久々にお見かけするので、それだけでも心浮き浮き。明るくきびきびした曲想も玉井さんにぴったり。カデンツァは玉井さん自ら作曲したものだそうです。モーツァルトらしい若々しい清潔でしゃんとした美しい音色とアーティキュレーションに魅了されます。楽器は、玉井さんが教授を務める東京芸大所蔵のストラディヴァリウス("Ex-Park, 1717年)だと知って、おおいに納得。

後半は、いよいよストラヴィンスキー。

《ダンス・コンセルタント》は、バレエ曲の形式を借りたコンサート用作品で、それだけに少しの斟酌もなく自由奔放に、ユーモアや機知が万華鏡のように千変万化し、切れの良いリズムが躍動します。編成も、作曲者の名を一躍高めた初期の三大バレエとは打って変わったような2管の古典的編成。前半もモーツァルトと呼応するような躍動感に、またまた垣内さんのバトンが冴えます。

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最後は、この日の最大の目玉。室内オーケストラ版の《火の鳥》。

《火の鳥》には、もともとの全曲版のほかに組曲版があって、その組曲版にも、オリジナルの4管編成に近い1911年版、3管編成の1919年版、そして、《ダンス・コンセルタント》と同じアメリカ時代になってからの1945年版があります。私たちの耳に一番なじみのあるのは1919年版だと思いますが、最近は1945年版も取り上げられるようになったようです。

この日演奏されたパウル・レオナルト・シェーファーによる編曲は、その1945年版をもとにさらに室内オーケストラにふさわしい凝縮した編成としたものと言ってよいと思います。管楽器群は、すべてひとりのソロ奏者のみ。これにピアノが加わるのは1945年版と同じ。打楽器は、ティンパニ奏者に加えてもう一人の奏者が加わり様々な打楽器を受け持ちます。

ストラヴィンスキー初期の華麗な色彩はそのままに、ひとりひとりのソリストが超絶技巧の合奏のように華麗なアンサンブルを展開。それは、聴くのはもちろん見ても痛快な、まさにカレイドスコープ的演奏で大興奮。

そういう効果は初っぱなからいきなり来ます。打楽器は、大オーケストラではステージ奥に配置されますが、今回は指揮者の右手真横のステージ前縁に所狭しと各種楽器が並びます。特にグランカッサ(大太鼓)が最前縁でまともに客席側を向いている。この超低音のロール音がごくごく静かに、しかし、はっきりと明瞭に響く導入は、まさに静寂の超低音の魅力。

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《火の鳥》は、前半はこういうピアニッシモで、楽器パートが精妙に絡み合う室内楽的な展開が続き、ともすれば起伏に乏しく退屈するのですが、編成をぐっと絞っているだけに各木管奏者は、あれこれと持ち替えて大忙し。アルトフルートの響きも印象的ですし、金管のミュートも効果的。すべて一発勝負のホルンはとてもスリリング。その中で、オーボエだけはあえて持ち替え無しなのは1945年版にならったからでしょうか、あの〈子守歌〉もコールアングレイではなくオーボエで吹ききってしまいます。そのオーボエの吉井瑞穂さんの音色がとびきり素晴らしい。

それでも、終曲に向けての〈魔王カッシェイの凶悪な踊り〉の大狂乱は、ホールが音で充満するほどの大迫力。打楽器は楽器の間を駆け巡るように大忙し。ティンバニの武藤厚志さんは、左手にティンパニのマレット、右手は吊りトライアングルのバチと二刀流。さすがにこの吊りトライアングルは、通常とは音色の感触がやや違いましたが、両手での二刀流はこれまたとてもスリリング。

終曲のクライマックスではっとさせられるのは、賛歌のテーマを途切れ途切れに押すように演奏するところ。従来の版では壮麗重厚なレガートとテヌートによるにコラールとなるところ。それに慣れた耳には違和感があるかもしれないけれど、筋肉質で引き締まった響きときびきびしたフォームの躍動が見事。これが明らかにストラヴィンスキーの確信的意図であることは、作曲者自身の編曲による独奏ピアノ版でも確認できました。

コロナ禍で、かなり空席が目立ちましたが、最後の和音の残響が消えた瞬間に湧き上がった会場いっぱいの大拍手がなかなか鳴り止みません。

鬱屈した世情と折からの梅雨空の鬱陶しさを吹き飛ばすような、爽快、痛快なコンサートでした。



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紀尾井ホール室内管弦楽団 第126回定期演奏会
2021年5月22日(土) 14:00
東京・四谷 紀尾井ホール
(2階センター 2列13番)

垣内悠希 指揮
玉井菜採 ヴァイオリン
紀尾井ホール室内管弦楽団
(コンサートマスター:野口千代光/玉井菜採)

モーツァルト:
歌劇《イドメネオ》バレエ音楽 K.367
 〜シャコンヌとル・グラン氏のパ・スール
ヴァイオリン協奏曲第4番ニ長調 K.218
(アンコール)
J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番BWV1006より第6曲ジーグ

ストラヴィンスキー:
ダンス・コンセルタント
バレエ組曲《火の鳥》シェーファー編室内オーケストラ版 [日本初演]


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