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2018年10月04日10:22

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メディアの興亡 (新忠篤氏ミニコンサート)

新忠篤氏の試聴会は、隔月の月末金曜日夜に秋葉原のアムトランスで開催されています。

今回のテーマはDCC(デジタル・コンパクト・カセット)。

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DCCのことをご記憶の方はどれだけいらっしゃるだろうか。1991年に発表され2000年には全てのハードウェアメーカーが撤退。普及することなく極めて短命に終わったオーディオ規格でした。

DCCは、フィリップスの考案で日本の松下電器(現・パナソニック)と共同で開発されました。アナログコンパクトカセットと同サイズなので互換性があるというのがウリでしたが、ほぼ同時に市場化されたMDに較べて携帯性で劣り普及することなく市場から退出せざるを得なかったようです。

私自身は、ちょうどこの時期に米国勤務だったこともあり、見たことも聞いたこともありません。帰国後、海外出張の長旅に重宝したのはMDでした。ですからDCCについては、その記憶はおろか、興味も愛着もありませんでしたが、当時、フィリップスレコードの日本事業に当たっていたことからこのプロジェクトに参加していたという新氏のお話を交えての試聴はとても興味深いものでした。

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この日のシステム・ラインアップは、3年ぶりの新作という7044パラレル・シングル・アンプ。

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プリアンプは、以前に氏が自作されたKORGの新ミニチュア真空管を使用したもの。

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スピーカーは、いつものアムトランス試聴室のWEのレプリカ。

7044は出力の小さなMT管で、この新作アンプの出力はわずかに200mWという超低出力。新氏は、これにファインメットコアトランスを奢り、さらに半波整流電源というこだわり。この7044は最近急に市場から姿を消してしまったのだとか。韓国のとある真空管アンプビルダーがこの球を使用した超高級アンプを製作。そのために買い占めているのではないかとのことですが、それだけ音の良い球だということでしょうか。

プレーヤーは、DCC900でフィリップスの最上級機種。

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DCCの最大の難点は、頭出しに時間がかかってしまうこと。カセットとは違って自動で頭出しは出来るのですが、ランダムアクセスができないので、新氏も苦笑しながら「ちょっとしばらくお待ちください」を連発していました。携帯性に加えて、このランダムアクセスが出来ないことがDCCが短命に終わった要因だそうです。

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ソフトは、フィリップスを始めDG、ロンドン(デッカ)が参加しましたが、MD派のソニーは見送るなど、ソフト数はあまり多くなかったようです。

最初は、いわゆる「3大テノール」から。音は決してCDに優るというものではありません。試しにということで、同じものをカセットテープで聴かせてもらいました。DCCのハウジングはアナログカセットよりも厚め。こうやってどちらもそのまま聴けるのが最大の特長です。やはりアナログカセットよりはるかに音がよい。

スピーカーは、110dBの高効率ですが、さすがに200mWのアンプではクリップしてしまいます。クリップにもふた通りあるようで、パルスのようなピークがかなりの頻度で耳に刺さるのと、トゥッティなどでは音が飽和してザーっと崩れてしまう。けれども聴き進むと、次第に脳が選別してより分けて聴けるようになります。これも“カクテルパーティ効果”なのでしょうか。ハムノイズとは違って、音が鳴っていると歪むので慣れるのに時間がかかります。

デュメイとペレシュのブラームスのソナタ。CDでも良い録音だと感じている演奏ですが、先ほどのテノールよりも小音量部分では、そういう美音が聞こえてきます。

内田光子のモーツァルトの協奏曲。この20番と21番のカップリングが、内田の全集の最初の録音だそうです。新氏はあえて静かな緩徐楽章だけをかけます。ピアノの美しいソノリティやオーケストラの静かに波打つ様子に次第に引き込まれていきます。

ムローヴァが小澤征爾/BSOと入れたチャイコフスキーとシベリウスのカップリング。これもムローヴァの初録音。そのチャイコフスキーはとても清潔で折り目正しいフレージングですが、細部がとても丁寧でその繊細な表情から仄暗い情念が浮かび上がってきます。耳のほうもトゥッティの破綻にはどんどんと寛容になり、小音量のディテールに気持ちが集中できるようになってきます。ムローヴァはこんなに素晴らしいチャイコフスキーを弾いていたのかと改めて心が揺らぐような気持ちで聴き入りました。

新氏がフィリップスの音を誉めるのは当然ですが、確かにDCCとの相性はフィリップスが抜群のように思います。あるいは、DCCにかける意気込みの違いからリマスタリング等にも一段と注力していたのでしょうか。新氏によるとDCCはCDの16bitに対して18bitだったそうです。マスタリング次第ではCDよりも良い音が出せたのでしょう。

こうやって聴き進むと、新氏が、棚に残っていた7044を見てアンプの再製作に取り組んだこだわりもわかるような気がします。MT管なのに音色が濃厚で深みがあります。

終わりに「さすがにパワーが足りず、お聞き苦しいところもありましたがご容赦ください。やはりこの会場ですと、何とか1Wは欲しいですね。でもとても気に入っているので、もう少し頑張ってみるかな」と笑みをたたえて話されていたので、心の内にさらにアンプ作りにチャレンジしようとの気持ちが芽生えられたようです。



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「メディアの興亡」というのは、1986年に刊行されたノンフィクションでその年の大宅壮一賞を受賞しています。

昭和40年代に激しい攻防を繰り広げた新聞界を描いたもの。新たな局面を迎えた新聞というメディアの苦闘を、過激なスクープ取材と社内抗争の暗闘に明け暮れた毎日新聞を対比させながら、鉛の活字からコンピュータによる新聞づくりへと果敢に挑戦した日経新聞の技術開発を通じて、生々しく描いています。

同時にそれは、コンピューター市場を育てた巨人IBMの日本法人の若きリーダー椎名武雄が全力を注入した巨大プロジェクトの物語にもなっています。IBMは、八幡製鐵(現・新日鉄)の巨大な工場生産システム開発と日経新聞の両社のニーズに徹底的に食らいつくことで、最先端の応用技術を築き上げていきます。日本のコンピューター応用の開発史としても一級のドキュメンタリーとなっています。

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