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2018年04月28日11:16

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レ・ヴァン・フランセ

レ・ヴァン・フランセとは「フランスの風」の意。クラリネットのポール・メイエの呼びかけで集まった木管アンサンブル。つまりウィンド・アンサンブルということ。フランス流儀を貫く名人集団です。

いずれもオーケストラの一員として、それぞれの楽器でのトップスターともいうべきソリストたちが一同に会しての贅沢極まりないオールスターアンサンブル。木管楽器好きの私としてはどうしても一度は聴きたかったアンサンブルです。これを響きの良い700席足らずの水戸市芸術会館で聴けるとあって楽しみにしていました。

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常磐道をひた走り、ホールの地下駐車場に車を入れて地上に出ると、まだまだ外は明るい。そこにはいつもと違って制服姿の高校生たちの集団で賑わっています。ちょっと合点がいくまでに時間がかかりましたが、学生カバンやバックパックとともにフルートなどの楽器ケースも手にしているのを見てやっとわかりました。ブラバン女子たちなんですね。この日は、事前に公開リハーサルもあったそうで、先生に引率されてそこから参加していたらしく、開演前の緑地で弁当などをほおばる若い人たちで初夏のような陽気を感じさせるひとときです。

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前半は、グリンカとテュイレという中東欧の伝統的なアンサンブル。流麗で音色豊かな木管楽器の音色と溶け合うようなハーモニーがとても心地よい。グリンカでは愁いのあるハーモニーとクラリネットとファゴットの伸びやかな歌が聴けます。

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ジルベール・オダンさんの楽器は、ヘッケル式の“ファゴット”ではなくてフランス独自の“バソン”です。単にファゴット/バスーンという言語や呼称の違いだけではありません。間近で見ると確かにちょっと見かけも違います。音を聴くと、頭に思い浮かべるのはモーツァルトの協奏曲ではなくてサン=サーンスのソナタのほう。いつのまにか何となく頭が覚えているのでしょう。ストラヴィンスキーのあの有名な「春の祭典」の冒頭も、通常のファゴットではなくてこのバソン”を想定して書かれたと言われていて、実際に、最近はあえてバソンで演奏するということも増えているようです。

テュイレはオーストリアの作曲家。R.シュトラウスとも親交があってその室内楽作品をシュトラウスは絶賛していたとか。

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ホルンのヴラトコヴィチさんはザグレブ生まれですがホルンを習い覚えたきっかけはアメリカ在住時代のことだそうです。銀髪に鬚というのは、どこか典型的なホルンの名手という面持ちだと思ってしまうのは、シカゴ響の名手クレヴェンジャーの顔を思い浮かべてしまうからでしょうか。ホルンが木管と音色がよく溶け合い、音に厚みや深みを与えてくれるということがよくわかります。

後半は、一転して目が醒めるような二十世紀フランスもの。

言ってみれば木管アンサンブルの一番美味しいところ。超絶的な技巧とそれぞれの楽器の個性と自由行動が百花繚乱のブーケのように弾け散る音楽。まさにこのアンサンブルのオハコともいうべきレパートリーなのだと思います。それはもう贅を尽くした食材を取りそろえ、その食材それぞれの鮮烈な個性的なフレーバーとテクスチャーを活かしながら、混然とした掛け合いで生ずる新たな味の七変化を楽しむといった最高に贅沢なフランス料理を味わい尽くすような気分でした。

このアンサンブルには指揮者はおろかリーダーもいません。特定のシェフによる料理というよりは、複数のシェフがそれぞれに個性と工夫をぶつけ合い、それでいてフランスのエスプリという旨味や闊達な空気を醸し出す。

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エマヌエル・パユさんといえば、人気・実力もナンバーワン。ベルリン・フィルのなかに彼を見つけるとうれしくもなり、ソロを聴けばそのスター性に欣喜雀躍、そして、このアンサンブルでも集団の一員としての演奏を聴けるのが不思議な気さえしてきます。しかも、演奏のスタイルがどこにいても同じなのがさらに不思議な気分にさせてしまいます。

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オーボエのフランソワ・ルルーさんもバイエルン放送響の名手でありスター的ソリストということで同じ。でも、額が広くかなり御髪が後退しているところは、やっぱり、典型的なオーボエの名手という風情。「オーボエ奏者は禿げる」というのがオケオチのひとつですが、その音色はまさに金色の輝きと飴のような尾を引くような甘味があり、しかも、フルート、バソン、いずれともしっくりと溶け込んでいく。

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ポール・メイエさんも、同じ貴公子的大スターですがすらりとして背が高いところがやっぱり典型的なクラリネット奏者。若い頃から活躍してきたので貴公子歴が長い。会場右手の最前列に先ほどの制服姿のブラバン女子が陣取って、メイエさんがそちらに向いて答礼するとキャーっという黄色い声が。ファンサービスもあって拍手の際には何度かそちらを向くのですがどこか照れたような表情を見せるところが可愛い。

プーランクの天地をひっくり返したような魅力はやっぱり最高。アンコール2曲目のドビュッシーは、ピアノ連弾でも管弦楽でも大好きな曲だけれど、まるで、この木管アンサンブルのために書かれたオリジナルかと錯覚するほどの素晴らしい色彩感でした。






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レ・ヴァン・フランセ
2018年4月25日 19:00
茨城県水戸市 水戸市芸術会館
(E列31番)

レ・ヴァン・フランセ
 エマヌエル・パユ(フルート)
 フランソワ・ルルー(オーボエ)
 ポール・メイエ(クラリネット)
 ラドヴァン・ブラトコヴィチ(ホルン)
 ジルベール・オダン(バソン)
 エリック・ル・サージュ(ピアノ)

グリンカ:悲愴三重奏曲 ニ短調
デュイレ:ピアノと管楽五重奏のための六重奏国 変ロ長調作品6

イベール:木管五重奏のための3つの小品
ミヨー:フルート、オーボエ、クラリネットとピアノのためのソナタ作品47
プーランク:六重奏曲 FP100

(アンコール)
ドヴォルザーク:六重奏曲より第3楽章
ドビュッシー:小組曲より“小舟にて”
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