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2016年10月30日10:12

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オーディオの「壁」

文字通り「壁」のお話しです。

ステレオ再生では、左右だけではなく奥行きも表現されます。スピーカーの後方にも音場空間が広がります。まるで後方の壁が無くなったかのように後方に音像が立体的に展開します。まるで壁を突き抜けて空間が出来たかのように。ところが、人によってはなかなかそれが感じ取りにくいということがあるようです。

以前、スピーカーの床置き平行法を試してみたことがあります。
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両スピーカーをずっと前に出して、床に置いてやや上向きに仰角をつけて平行にセッティングするというのが基本です。すると、まるで後ろのスピーカーが鳴っているかのように感じてびっくりしてしまいます。

これは視覚的な「壁」のせいです。人間は相対的に視覚が発達した動物で、認知上視覚の優先度が高いので通常のセッティングでは奥行きを「壁」が邪魔してしまうのです。一方でスピーカーを前に持ってくると、壁との間にスペースがあるのでそこに音像が展開するように感じ、まるで壁際に置いたスピーカーが鳴っているように感じるのです。

つまり、実は壁に近いセッティングであっても、壁から離して前のほうへリスナーへ近づけたセッティングであっても、立体的な音像や音場が実現できていれば同じなのですが、どうしても目の前の壁を中心に音像展開や音場を感じ取ってしまおうとするのです。これがすなわちオーディオにおける「視覚の壁」です。

もうひとつは「物理的な壁」です。

後方に限らず部屋の壁は反射面として作用しますので、反射波による位相干渉や定在波などの複雑な音響現象を起こします。理想は壁がない空間で聴くということかもしれません。無響室とか広野の真ん中で聴くとまではいかなくとも出来るだけ広い、何十畳もある部屋で聴くのが理想かもしれません。ところが人間とはやっかいなものでそう単純でもないのです。そのことは無響室を体験するとわかります。人間はふだん生活している空間の響きに慣れていてそこでこそくつろげるのです。慣れ親しんだスペースの響きのなかで聴くオーディオ音響がむしろ理想といえます。録音やマスタリングの際のモニタールームもだいたいは人間の身の丈に合ったスペースになっています。

よくオーディオ再生の要素は、過半が「部屋」を占めると言われます。オーディオの趣味とは、気に入ったアンプやスピーカーをいかに自分の気に入ったように鳴らすかだと思うのですが、結局は部屋の要素が大きい。そのことはその通りだと思います。

けれども、ばかでかい劇場用のスピーカーやとてつもない性能の業務用機器は別ですが、コンシューマー向けやモニター用のオーディオ装置であれば、部屋の大きさやアコースティックは、私たちの一般的な生活空間とかけ離れたものを求めているわけではないと思います。

そこで問題となるのが「壁」というわけです。

特にスピーカーの位置取りでは、壁と離してセッティングすることが肝要です。ノードストは、ウーファー中心の高さ、横壁からの距離と後の壁との距離との数学的関係を提唱しています。最も近い反射壁までの距離をX、順次、距離に近い方からY、Zとして数式を設定し、Yの2乗がXとZとの積に均しくなるような計算式を提唱しています。
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拙宅の場合、高さ=97�僉�横壁からの距離が92�僉�後の壁からの距離が64.5�僂箸覆辰討い泙垢�、やはり87�僂藁イ靴進�がよいということになります。現実は、部屋のレイアウトなどで今のが精一杯。この公式はもっぱら低音域のことを問題にしていて、実際、私のシステムは以前の805の時代から低域の量感が不足気味です。T4になって改善しましたが、本音では、もうちょっと前(リスナー側)に出したいところです。

日本の間取りを考えると、江戸間を前提にしたモジュールでは6畳間ではタテが3.6m、ヨコが2.7mとなり、タテ遣いで仮に横壁からそれぞれ50�僂困栂イ靴萄険Δ離好圈璽�ー間隔をおよそ1.7mとした場合、後壁から離す距離は1.9mということになります。これだともはや6畳間の真ん中近くにスピーカーを置けということになってしまいます。8畳間であれば、形のバリエーションはありますがそれでもおおよそ部屋の1/3ぐらいになるでしょう。

しかし、生活空間で真ん中とか1/3に置くというのは現実的ではないでしょう。家具類を入れ、リスニングポジションを考えれば、現実には壁近くのセッティングを前提にして最大限どれだけ離せるかということになるでしょう。そのことがオーディオの壁(=障壁、障害、ハードル)というわけです。

そうであっても、スピーカーの壁との距離調整はとても大事です。

部屋の反射や定在波はとても複雑ですので、もちろん計算通りにはいきません。あくまでもこうしたことを目安にして、あとは聴感を頼りに位置決めをしていくことになります。もちろん妥協の産物でもあるわけですが、それでも可動範囲で最良の位置を求める努力は惜しむべきではないでしょう。私の場合は、量感を欲張らずに質感を大事にしています。うまく壁を利用すれば量感が得られますが、その分、低域楽器の音像はぼやけて触感表現の精度や音色の個性を失っていきます。反射による逆相成分によるキャンセルが増えれば、もちろん量感が減って音が痩せて、硬くなっていきます。うまくバランスさせれば量感も質感もよくなるという最適点が見つかるでしょう。

壁は、障害にも味方にもなりますね。

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