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2025年01月10日23:45

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「さいわい住むと人のいう」(菰野 江名 著)読了

デビュー作『つぎはぐ、さんかく』で注目された著者の第二作。


若い新人作家とは思えない巧みな構成、筆致と人格描写。二人の女性の痛切な人生を描き、読後にはじんわりと心に染み入る感動が心地よい。

市役所の地域福祉課に正式配属となった新卒採用の青葉祐太朗。民生委員など土地の顔役の挨拶まわりで、最後にひきあわされた二人の女性――高齢の姉妹の二人だけの生活というのも不思議だけれど、そういう二人にはいささか不釣り合いの大きな豪邸というのがなお不思議。その邸の庭の桜の木に青葉は不思議な既視感を覚える。

その二人は間もなく亡くなる。あの豪邸である自宅のそれぞれの寝室で同時に亡くなっていた。あらかじめ予期していたかのように、セキュリティへの自動通報も葬儀の段取りなども用意周到に準備されていた。通夜に出席した青葉は、そのおびただしい数の弔問客に驚く……。

物語は、そういう二人の老姉妹の静かなたたずまいと終末から20年さかのぼり、そして、さらに20年さかのぼるという逆進行で、次第に二人の人生の歩みが明らかになっていく。不思議が明らかになる過程のそのたびに読み手は感動を覚えずにはいられない。一番の不思議である豪邸が豪邸である秘密も解き明かされる。

そして最終章では、最後の不思議でもある青葉祐太朗が既視感を覚えた桜の木の秘密も明らかになる。そういう人と人との人生が巡る大きな環のつながりや呼応に思わず涙がこみ上げてくる。そういう爽やかな感動が拡がります。

巧まざる構成と筆致というのは、ひとつには遡行する時間。それが物語に謎解きのような扉がひとつひとつ開いていく心地よさだけではなく、大きな時の流れをも感じさせてくれて、感動をひときわ深めてくれる。全てが一人称で語られることに、読み手の共感を抵抗なく呼び込んでいき、物語の登場人物たちとと読み手が向き合い、その心と心が行き交う心地よさもあります。


デビュー作のほうも読んでみたいと思います。


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さいわい住むと人のいう
菰野 江名 (著)

ポプラ社
2024年9月9日 第一刷
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