ミラノの三日目は日曜日。
前回もそうでしたが、月の最終日曜日ですのでミラノ名物ノミの市が立ちます。というわけで、午前中は様々な骨董市のテントが軒を並べるナヴィリオ運河のそぞろ歩き。
去年は大寒波が襲った凍えるような寒さの2月でしたが、この日はちょっと肌寒いものの春の気持ちよく腫れた青空のもとで気持ちの良い昼前の散歩です。
とても楽しい骨董品がいろいろと売られていますが、さすがに飛行機での海外旅行ですのでなかなか持って帰れません。それでも、にぎやかな運河沿いの道をあれこれ冷やかしながら歩くのは楽しいものです。
午後は、前回、行きそびれたヴェルディ・ハウス(音楽家のための憩いの家)にも行ってみました。
静かで緑の多い郊外地にあるのだろうと想像していたのとは違って、けっこう賑やかな車の多い大きなロータリーに面して建っていました。
予約も何もなしに、日曜日の昼下がりに勝手に押しかけたので、建物のなかには入れてもらえませんでした。ここは老人ホームとして厳然として現役なのです。ここでは時々サロンコンサートも開催されているようです。それでも、快く中庭とその奥のヴェルディの墓は見学させてもらえたのは幸いでした。
日曜日のマチネーは、前回のミラノ訪問と同じく、ラ・ヴェルディ・オーディトリウムのシンフォニー・コンサートへ足を運びました。
今回は事前にネットで電子チケットを取っていたのですが、なかなか人気で定期予約のファンが多いのか、やっぱり1階席後方の2階席のひさしの下ということであまりよい席には恵まれませんでした。
プログラムは、前回のオール・マーラーに引き続き、今回もドイツもの。取り上げられた2曲は、ともにウィーンの全くの同時代に作曲されたもの。ブラームスとブルックナーというのは、当時、ウィーンでの人気を2分していましたが、ワグナー信奉派と反ワグナー保守派と対立する2派の先鋒のように祭り上げられた大作曲家で、あまり取り合わせがよろしくない。
ソリストのリザ・フェルシュトマンは、地元オランダではジャニーヌ・ヤンセンと人気を2分する女流の若手ヴァイオリニストです。ところが対照的に来日が少ないフェルシュトマンは日本では圧倒的に知名度が低いようです。私は、なぜか縁があってこれで2度目の生演奏ということになります。前回は、アムステルダム・コンセルトヘボウの小ホールでバッハの無伴奏全曲演奏で、終盤こそスタミナ切れ気味でしたが素晴らしい演奏に感銘させられたので今回も期待していました。ところが、イタリアのオーケストラ相手にいささか気合い不足のブラームスに終わったのは残念でした。ヤンセンに較べるとちょっと気迫に欠けるところがあってオーケストラを引っ張りきれないのでしょうか。
前半はそれでおしまい。後半は、ブルックナーが控えています。
こういうコンサートの高齢化は、日本だけでなくイタリアでも事情は同じです。会場は高齢者が目立ちます。しかも、杖をついていたり、見るからに足元がおぼつかない老人がかなり目立ちます。なかには車椅子や、あるいは両脇をささえられてようやく席につくような人も少なくありません。
ブルックナーは、弦のトレモロで始まる冒頭のお定まりのブルックナー開始こそ、それなりの緊張感がありましたが、あとはとりとめもない冗長な響きと、唐突な停止の繰り返しばかりで、実に退屈極まりない。楽章が終わる毎に安堵のため息と堰を切ったような咳払いが湧き上がります。
イタリアでイタリアのオーケストラで聴くブルックナーは、前回聴いたこのオーケストラのマーラー以上に紋切り型ばかりで霊感に乏しい。指揮者は、何とかドイツ音楽を根付かせようとこだわっているのかもしれませんが、その手腕の凡庸さは隠しようがないようです。そういうことを本能的に感じているのは、もしかしたら会場のイタリアの聴衆も同じなのかもしれません。
ことさらに長い最終楽章もあともう少しというところで、ついに会場の忍耐が途切れたのか、がたがたと音を立てるようによろよろの老人があちこちで席を立って通路をひとに抱えられるようにして出て行きます。衰えた身体の自然現象は抑えようもありません。ドアの開け閉めの音が繰り返し響き、もはや、学級崩壊といっても過言でもないくらい。それでも、それなりの暖かい拍手で終演を迎えるところは、歌劇場の聴衆とはかなり気質が違うようです。
さる現役の大指揮者が、ブルックナー上演に限って男性比率が上がって熱い称賛の拍手が湧き上がる日本のコンサート風景をとても信じられないと笑っていましたが、ドイツ語圏外でのブルックナーというのはそういう現実なのだと痛感させられました。
さて、夜はスカラ座でいよいよ大団円を迎えます。(続く)
ミラノ・ジュゼッペ・ヴェルディ交響楽団
2019年3月31日(日) 16:00
ミラノ ラ・ヴェルディ・オーディトリウム
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品77
リザ・フェルシュトマン(ヴァイオリン)
ブルックナー:交響曲第4番変ホ長調『ロマンティック』
指揮:クラウス・ペーター・フロール
Orchestra Sinfonica di Milano Giuseppe Verdi
Violin: Liza Ferschtman
Conductor: Claus Peter Flor
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