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2018年10月25日10:17

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吉井瑞穂&北谷直樹 デュオ・コンサート

吉井さんを最初に聴いたのは、水戸室内管弦楽団の定期演奏会でした。創設メンバーだった宮本文昭さんが2007年に引退を宣言した後、確か、2回ほど出演したと記憶しています。その時、このひとが後任で間違いなしと思ったのですが、それっきりになってしまい残念に思っていました。

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もともと、芸大在学中にドイツに留学し、以来、もっぱら活動拠点を欧州に活躍されていたのでなかなか日本には縁が薄かったようです。気がついてみると、アバドの指揮するルツェルン祝祭管弦楽団の映像に映り込んでいてびっくり仰天。今や、マーラー室内管弦楽団の首席奏者として定着。その活躍ぶりに、10年前の自分の見立ては間違っていなかったと思う一方で、今の進境ぶりをぜひ目の当たりにしたいと切望していました。

ところが、最近になって日本での活動にも力を入れるようになったようで、先だっても紀尾井ホール室内管にサプライズの客演をされています。TV画像ですがN響定期でもお見かけしました。今回は、ソロ活動としてヤマハホールに出演とのことで早くから楽しみにしていました。

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ということで、当初は吉井さん目当てのコンサートだったのですが、いざチケットを押さえようとプログラムを見ると北谷直樹(きたや なおき)さんとのデュオ・コンサートだというので二度びっくり。

実は、北谷さんは、私にとって長く謎の音楽家でした。

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バッハのチェンバロのための協奏曲集に一時とても惹かれていた頃、ネットで探し当てたCDが北谷さんのものだったのです。

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チェンバロ独奏とばかり思っていましたが、これをかけてみてびっくり。バロックチェロやテオルボといった通奏低音を伴ったアンサンブルだったからです。バッハが、ヴィヴァルディなどの協奏曲をチェンバロ曲に編曲した一連の作品は、バッハのカンティナーレの秘密を解く興味深い、なおかつ、魅力満載のチェンバロ曲なのですが、通奏低音付の厚い豊かな響きのアンサンブルで聴くと、独奏とはちがったバッハのイタリアへの熱い思いが伝わってきます。それが日本人演奏家によって企画され演奏されているということに驚いたのです。

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北谷さんも、やはり、欧州を拠点に活躍されている音楽家で、日本ではほとんど無名に近い。いきなりの出会い頭のような初体験が強烈だっただけに、その後、北谷直樹という音楽家は私にとって深い謎のようなチェンバロ奏者だったのです。

この二人に、ゲストとしてバロック・チェロの懸田貴嗣が加わってのアンサンブル。

一曲目のオーボエソナタは、息子のカール・フィリップ・エマヌエルが「父親のペンになる曲」だと記していたので、J.S.バッハの曲だと信じられBWV番号もつけられて親しまれてきましたが、今ではC.P.E.バッハ自身の作だという説が有力になっています。吉井さんはフレージングをステップするように軽い音楽にして、C.P.E.バッハらしい古典美を際立たせます。

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二曲目では、吉井さんは一時退場。懸田さんのチェロ独奏でグラウンのソナタという珍しい曲。バロック・チェロは、ピンを持たず両膝で抱えるように弾かれるので、音域も運動性も限られますが、それだけに響きが暖かく音色も明るい。独特の旋律美の魅力があります。

三曲目では、再び吉井さんが登場して、やはりC.P.E.バッハのソナタ。こんな演奏を聴かされるとさすがC.P.E.バッハだと思ってしまいます。そういうC.P.E.の哀愁に満ちた夢みるようなアダージョと古典的な均整美と躍動する楽しさが横溢しています。

休憩をはさんでの一曲目は、ピアーニのソナタという珍しい曲。マイクを持っての北谷のスピーチによると、最近になって出版譜が発見されたという。もともとイタリア人のピアーニがフランスに移住して活躍。フランス風の名前になっていたためにピアーニの作とは知られていなかったとか。おそらく日本初演だろうとのことだそうです。

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二曲目は、その北谷のソロでL.クープラン。これが圧巻でした。

それまでの伴奏を聴いていても、北谷には日本人離れしたリズムやアクセントが身に染みついていて、たびたびはっとさせられます。それがヨーロッパ伝統のものかどうかはわかりませんが、むしろ、現代のロックにも通ずる独特の魅力があります。華麗な指さばきの技巧と重めの和声やアクセント、スウィング感覚が最後のパッサカリアで炸裂しました。

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そして最後のサンマルディーニのソナタは、吉井さんの伸びやかな吹管の美声の独壇場。

木管楽器というのは、いわゆる楽器が《暖まる》までに時間がかかるもの。前半まではさすがの吉井さんも吹きにくそうにしているように見えました。いつもそういうものなのかはよくわかりません。この日は開演前と休憩時にしきりにステージマネジャーが霧吹きでステージを濡らしていました。こんな風景は初めて見ました。北谷や吉井によれば、この日のヤマハホールのステージは異常に乾燥しているのだそうです。そういうことが関係しているのか、あるいは、バロックの低めのピッチではモダン・オーボエが鳴りにくいのか、前半はちょっと本領が発揮できていないと感じていたのです、

それが、サンマルティーニでは吉井さんのヤマハの美音がまさに冴え渡ったという感じでした。



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吉井瑞穂&北谷直樹 デュオ・コンサート
〜深遠なバロック時代への誘い〜 Special Guest 懸田貴嗣

2018年10月18日(木) 19:00
東京・銀座 銀座ヤマハホール
(1階 D列8番)

吉井瑞穂(オーボエ)
北谷直樹(チェンバロ)
懸田貴嗣(バロック・チェロ)

J.S.バッハ、C.P.E.バッハ/オーボエ・ソナタ 変ホ長調 BWV 1031, H.545
C.H.グラウン/チェロ・ソナタ ハ長調 B:XVII:53
C.P.E.バッハ/オーボエ・ソナタ ト短調 Wq.135 H.135

G.A.ピアーニ/オーボエ・ソナタ 第4番 ニ長調
L.クープラン/チェンバロの為の組曲 ハ調
G.サンマルティーニ/オーボエ・ソナタ ト長調 Op.2-4

(アンコール)
モリコーネ/ガブリエルのオーボエ
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