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2018年06月16日12:32

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「巡査長 真行寺弘道」 (榎本 憲男) 読了

その紹介文によると『オーディオファンなら一気読み必至!』なのだそうだ。

面白い。確かに一気読みしてしまいました。

ベテランの捜査一課刑事・真行寺弘道は、出世拒否で53歳にしていまだに最下階級の巡査長。しかもバツイチ。「ニコイチ」と呼ばれる同僚刑事との同行相勤をせずに単独行動するなど、その行動や言動は型破りだが、数々の手柄を立てて、その独特の追求と味のある捜査力で誰にも一目置かれている。

その真行寺が、介護施設で起きた介護ロボットの暴走事件の捜査中、自称・ハッカーの黒木という謎の青年と親しくなる。真行寺は、その黒木の助けを借りて見事その難事件を解決に導く。続いて起きた元警察官僚の議員変死事件でも、真行寺は、違法捜査とは知りながら黒木の助けを借りるが、それは次第にとてつもない巨大な国家的陰謀であることを暴いていくのだが…。

その真行寺は、大のオーディオマニアでありロックを聴くのが唯一の楽しみ。謎のハッカー黒木良平と出会うのは、秋葉原の「ラジオデパート」に真空管(300B)を物色中のこと。店員と間違えて声をかけ、そのまま黒木の秘密のアジト(?)である高尾の一軒家を訪れ、みかけはみすぼらしい自作スピーカーと中華製デジタルアンプのサウンドに打ちのめされる。

高級ホテルにデリヘル嬢を呼びつけ腹上死したという設定になりかねないが、その議員が最後に聴いていたというジャニス・ジョプリンの「ミー・アンド・ボビー・マギー」の歌詞の「自由」のメッセージにただならぬものを嗅ぎ取った真行寺は、それを実存主義的に解説し驚異的なハッカーの実力を持つ黒木に惹かれ、そのハッキングで得た情報で謎の鍵を次々に開けていく。

…というように、お話しのそこかしこに《オーディオ》がちりばめられている。しかも、そのエピソードがなかなかリアリティがあって、オーディオ・ファンは読んでいて思わずクスリとしてしまいます。

最後は、お決まりのような大どんでん返しが待っています。

事件は紆余曲折を経てなんとももどかしい結末に至り、黒木は、やがて、真行寺のもとを去って行きます。彼が真行寺に残したのは、最初の出会いでノックアウトした中華製のデジタルアンプではなくて黒木の自作らしい真空管アンプ。しかも、球は『マニア垂涎のアメリカ製』。すっかり黒木がデジタル派、情報ネットワークの達人だと思い込んでいた真行寺は意表を突かれてしまいます。

その黒木からは、海外の田舎のログハウスに落ち着いたとのメッセージが入ります。そのログハウスは『アンプを駆動する電流も近くを流れる川のように澄んでいるので、オーディオの環境としては理想的』だとか。さらに『このあたりはいい木材が安く手に入る』のでスピーカーを新調。キャビネットを大型化して20�儻�径のダブルウーファーで、そのユニットは『日本が地味に世界に誇るF社(安い!音よし!愛想よし!)の中古』をネットオークションで手に入れました…とさ。

もちろん、大どんでん返しとはそのことではなく、事件そのものの行方です。もっとも黒木の素性もデジタルかアナログかどころではないどんでん返しがあるというわけです。

真行寺が気分転換に立ち寄ったという『白山の音のよいという評判のジャズ喫茶』って、もしかしてマイミクさんの《マスター》のお店のこと!?

リアルだなぁ…。

とは言ってもオーディオマニアにとってのことですが。







巡査長 真行寺弘道
榎本 憲男 (著)
中公文庫
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