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2017年12月11日21:52

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粗にして野だが卑ではない(hijiyan邸訪問記)

定期的に定点観測的な相互交流をしているhijiyanさんのお宅を訪問しました。2週間ほど前に拙宅へ訪問いただいたオフ会のお返しというところですが、その間、hijiyanさんはGRFさんのところへ6年ぶりに訪問し大いに啓発を受けたご様子で、その成果というべきものに注目というところです。

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そのhijiyanさんのGRF邸訪問で話題になったのが、ラヴェルの《ラ・ヴァルス》。この冒頭の低音楽器のうごめきがどう再生できるのかという点です。以前、私がGRF邸のTROUBADOUR 80+TWで聴かされて衝撃を受け、hijiyan邸にこのソフトを持ち込んで、その興奮冷めやらぬままに何やら口走った言葉がどうもいけなかったようで、どうもダメ出しのように受け止められてしまっていたようなのです。

今回の訪問では、てっきりそのリベンジが主テーマと思いこみ、どちらかといえば低音フェチ的なものを数枚密かに持参していました。もともとhijiyanさんと言えば、爆音のイメージが強く幾多の猛者たちを返り討ち(?)にしていて、802Dから繰り出す低音の帯域の伸びと存在感は相当なもの。それがいかに改善強化されるのか…そんな展開を思い描いていたのです。

ところが…

いつものように最初に定点観測のソフトを聴かせていただくと、どうも様子が違うのです。

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幸田浩子さんの《アベ・マリア》では、むしろ以前よりも低音楽器の響きが引き締まり、存在感で聴かせると言うよりは音色や音程の鮮明さで対位法的な音楽性がより明瞭となる方向にシフトしています。このソフトについては以前にコントラバスの定位配置が話題になったことがあります。

いつも聴いているトラック1(カッチーニの《アベ・マリア》)では、リーフレット掲載の写真とは違っていて中央右奥に配置されているという話しでした。このソフトは、チェロとコントラバスがユニゾンであったり対位法的に別の動きをしたりというところがあって、チェロ2台、バス1台の三人の低弦の動きがきちんと分離して聞こえるのかという低域の試金石のようなところがあります。

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最初は低域に気を集中して聴いていたのですが、しばらくするとそういう立体的な音場感や定位配置のことを考えている自分に気がつきました。かつての議論では、バスはかなり中央奥にある(写真のハープ奏者の位置)という主張もあったのですが、最近、自分のシステムで聴いているとバスは右手に配置するチェロの右肩背後にいるという風に聞こえて、あまり写真と変わらないという気がしていました。その自分のイメージとhijiyan邸の再生が完全に一致しているということに気がついたのです。

この録音は、幸田浩子さんを扇の要の位置として、それを馬蹄形に取り囲むように弦楽オーケストラが配置されている。そのイメージがどう再現されるのか…というのが私の課題のひとつでした。

hijiyanさんは、これまでは左右の定位は素晴らしく安定明瞭でしたがクラシック音楽ではやや前後の立体感にはあまり頓着されていないようなところがありました。今回、何回か繰り返して聴かせていただいたのですが、そういう奥行き感がとてもよく出ています。扇の要のボーカルも、近すぎず、かといってハイエンドシステムにありがちなひどく奥まってしまうこともなく、よく肉声がこちらに迫ってきます。同時に、響きが四方に広がり、ステージ背面からの反響のような響きが気持ちよいところは《響き派》のhijiyanらしさは決して失われていません。ボーカル系やジャズでのしっかりした音像はそのままに、クラシックの奥行きある立体配置の再現という狙いでルームチューニングの細部見直しをされたそうです。

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このことは、もうひとつの定番ソフト《パッヘルベルのカノン》でも同様のイメージがあります。以前は、リスポジに居て自分自身が部屋中に充満した響きに包まれるというようなサウンドでした。まさに《響き派》のhijiyanさんの匠の技で、私には今もってどうやって響きや定位をコントロールしているのかまったくわかりません。ところが今回は、弦楽アンサンブルがある程度の奥行きをもってステージの奥行きを感じさせながらスピーカーの後方へと展開しています。チェンバロと低弦の通奏低音の右奥への立体定位も見事。背後の壁面を感じさせません。

どうやらGRFさんから触発されたのは、そういう奥行き感の深い音場ということにあったようで、低域の解像度はポイントの一部に過ぎなかったということのようです。低域の解像度ということも、そういう立体感と連動してチューニングされているという印象です。その成果は、一見地味なようですがとても顕著でした。

もうひとつ印象的だったのは、音量。

爆音派というイメージもあったhijiyanさんですが、聴いているとそういう以前の押し出し感があまりありません。決して音は小さい方ではないのですが、オーディオ的な大音量ではなくとてもナチュラルです。ふとスマホの騒音計ソフトで測ってみるとリスポジでおよそ80dBから87dB程度。ピークでもほとんど90dBを超えることはありません。これはちょっと意外でした。そういう音圧であっても、音楽的にはとても訴求力が強い、決して薄くならないしっかりした音量に聞こえるのです。

低域寄りのピラミッド型の帯域バランスや濃厚な音色は相変わらずです。とはいえ、それも小型スピーカーの拙宅システムと較べての相対比較のお話し。むしろウェルバランスともいうべき方向にどんどん進んでいるようで、低域は帯域は伸びています。粗にして野だが卑ではない…、勢いとかエネルギーがあって明瞭で濃厚だけれどもドンシャリともいうべき不自然な強調がないというところでしょうか。これもアンプと802の組み合わせの良さなのでしょう。hijiyanさんは、サンスイアンプの老朽化を気にしておられましたが、まだまだ意気軒昂という感じです。

最後にちょっと気になったのが、このソフト。

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前回、拙宅でお聴かせしたところ気に入っていただいて購入されたとのこと。GRFさんのところでかけたもらったところ「音が硬い」との評だったそうです。国内盤だからではないかとのご指摘もあったとか。ジャケットは見てみると「国内先行発売」という帯までついていますが、帰宅後、確認してみると私のCDと同一の国内初出盤に違いありません。諏訪内さんの2枚目のアルバムで、確か、国内プレスしかなかったはずです。

拙宅で自分のディスクを聴き直してみましたが、やはりhijiyanさんのところで聴かせていただいたものはちょっと色艶のようなものに乏しい気がします。同じ発売時期の同一ロットと思われる盤であっても音は微妙に違うのかもしれません。次の機会に、同じシステムで聴き較べてみたい気がしました。

いつもアーシングメソッドといった振動対策や電磁波ノイズ対策などの話題に事欠かずオーディオ愛好家の注目を引いてきたhijiyanさんですが、こういう音楽コンテンツにスポットを当てた一見地味で何気ない変化をもたらすチューニングテクニックも素晴らしい。今回もそういうhijiyanさんの匠の技を味わわせていただきました。
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