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2017年06月27日13:36

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ネマニャの奇跡 (読売日本交響楽団 土曜マチネーシリーズ)

在京オケの潜在的な実力の高さをまざまざと見せつけてくれたコンサートでした。

そもそも読響のこのシリーズのチケットを買ったのは、あるお目当てがあったから。ばらでの前売りはないので半年会員券を買った。言ってみれば、残りはオマケか惰性みたいなもの。だから何の思い入れも偏見も予見もない。それだけに読響の波の上下がよく見えるのだと思います。

この日の指揮者は、シモーネ・ヤング。

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昨年、1月のベルリン国立歌劇場での熱っぽい指揮ぶりに感激。それ以前に持っていた引っかかりのようなものがすっかり雲散霧消。素晴らしい指揮者だと思いました。それが、読響を振るとどういうことになるのか?

一曲目は、「オランダ人」。

出だしにちょっとした事故。ホルンの一人が構えるヤングの棒にはやって思わず息を吹き込んでしまったのです。ブッという音に一瞬ヤングがためらったのですが、そのまま思い切り振り下ろして序曲はスタートしました。ほんの一瞬のことで、その後は嵐に逆巻く波と愛の犠牲のドラマ。劇的表現力はさすがヤングです。読響の金管群も一体となっていつにない高揚感。

二曲目は、ブルッフのヴァイオリン協奏曲。

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ソリストについて私はまったく予備知識がありませんでしたが、ステージに現れたその異形の姿にちょっと引いてしまいました。縮れ髪の長髪にヒゲ面、黒づくめの革ジャンといった出で立ちはロックシンガーのよう。長身細身の長い脚にぴっちりした革のパンツという姿はどこかジャコメッティの「歩く人」のよう。セルビア出身と聞くとますますそのエキゾチシズムが際立ちます。

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さぞかし異色のソリストで、歪んだ奏法でユニークさを強調するような演奏をするのではないかとの懸念が一瞬頭をかすめましたが、最初の一音にはっとさせられます。よく磨かれたスムーズな運弓と滑らかで柔軟な左指。メロディラインが実に美しく豊かな歌があって、しかも、何の衒いもない。ポルタメントなど皆無なのにとても歌心と情感が豊か。

これに読響が実に見事に合わせていきます。トゥッティの劇的な情感は、読響のいつもながらの良さがさらに気持ちが入っています。この曲は、ホルンが安定していないと台無しになるところがありますが、読響のホルン陣がほんとうに美しい弱音の持続音を響かせてソロを引き立てます。メンバーの顔にはほんのりと赤みがかった高揚感さえ浮かび上がり、時に充実感に満ちた微笑みさえ見えてきます。

実際にフィナーレを弾ききった後のステージは音楽の充実感と喜びにあふれかえるような雰囲気で、楽団員もまるで総立ちのように弓で譜面台をたたき、足を踏みならしてソリストをたたえます。ヤングも楽員と一緒になってうれしそうに、オーケストラとの一体感あふれる充実した演奏をたたえるのです。

アンコールは、パガニーニのカプリース。一番最後の有名な一曲。これはまさにこのヴァイオリニストの真骨頂なのでしょう。超絶技巧を何の苦もなく実に楽しそうに余裕たっぷりに弾きこなしていきます。それは己の技巧を誇示するというより、技巧をショーアップしながら聴衆の気持ちを盛り立てていくサービス精神旺盛な演奏。パガニーニの天才とはそういうものだったのだと思います。

ネマニャ・ラドゥロヴィチ。このコンサートは、私にとっては彼によって引き起こされた奇跡のようなもの。私が無知なだけで、日本でもすでに多くのファンを勝ち得ているこのヴァイオリニストの名前は、ちょっとどうしても覚えておかなければならないと思います。

最後のブラームスも充実したもの。これは純然たるヤングの力量。普段はいくらでも気の乗らない、緊張感に欠ける演奏をしても恥じることのない楽団と、池袋のこのホールからこれだけの厚みと熱のこもったブラームスの響きを引き出したのですから。

定期とはちがって、親しみやすい名曲や新奇な近現代曲をプログラムに組むこのシリーズの聴衆はクラシックにありがちな気取ったところのない人々が多いのですが、それだけにこの日の会場の興奮した大喝采には真実味がとてもありました。

これだけの演奏をやってのける読響にもブラボーでした。





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第198回土曜マチネーシリーズ
2017年6月17日(土) 14:00
指揮=シモーネ・ヤング
ワグナー:歌劇〈さまよえるオランダ人〉
ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番 ト短調作品26
(アンコール)
パガニーニ:24の奇想曲より第24番


ブラームス:交響曲第2番 ニ長調 作品73

指揮=シモーネ・ヤングト
読売日本交響楽団
ヴァイオリン=ネマニャ・ラドゥロヴィチ
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