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2016年12月13日13:18

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「錆と人間」(ジョナサン・ウォルドマン著)読了

著者は科学ジャーナリストで、本書はその処女作。ウォールストリート・ジャーナル、ベストブック・オブ・ザ・イヤー受賞に輝くなど各界から絶賛を受けた。「錆」あるいは腐食という宿命と闘う金属という地味なテーマだが、それをとりまく人間模様の歴史と現在を広く取材し、その人間くさい物語を描ききっていてユニークな科学読み物になっている。

自由の女神の修復プロジェクト、ステンレス鋼開発ストーリー、缶詰に隠された粋を究めたコーティング技術と環境ホルモンリスク、艦艇から構築物、銃に至るまで装備兵器から施設に至る壮大な防食予算、アラスカの極北の石油パイプラインの錆探知ロボットなど話題は多岐にわたる。

著者のアプローチは、金属の酸化還元現象の科学的解明や腐食防食技術の探求というよりは、錆や防食を生業としている人々の人間くさい日々の営みにハイライトを当てている。確かに「錆」や「防食」というのは、科学技術としてはいささか陳腐な問題だが、その一方で極めて日常的で身近な問題で、その現象は意外なほどに細かく深くて終わりのない世界。そこに関わる人々のこだわりはかなり「オタク」的。

特に、極めて身近な世界である缶詰、あるいは、ビールやジュースなどの缶飲料の世界が実にppm以下のミクロで精緻な技術と億単位の生産量とのかけ離れたバランスで成立していることに驚く。しかも、その大半は金属というより塗料というべきコーディングの技術なのだ。そこには何とも隠微で怪しげな環境ホルモンのリスクが潜在する。

面白いことに、本書に登場する人々は正職としての「防食」の他にかなりディープな趣味を併せもっている。TAPS(アラスカ横断パイプラインシステム)の腐食検査エンジニアの観賞魚という趣味はちょっと常人のレベルを超えている。しかも大変な趣味なのだ。このパイプラインの検査には、日本のJFEエンジニアリングの検査ピグ技術も登場する。「検査ピグ」とは超音波探査や漏洩磁束探査センサーを装備したムカデにも似た管の内部を走行する「栓」のようなもの。JFEエンジニアリングのその分野での実績は世界No.1を誇っているという。

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そういう人間の面白さは、本来、科学的テーマである「錆」からしばしば大きく脱線する。それを冗長で散漫、科学ドキュメンタリーとしていかにも浅いと批判する向きもあるかもしれない。アメリカの文筆にありがちな過剰なまでの饒舌も、好き嫌いがあるかもしれない。それでも、この人間模様のユニークさ、意外性は魅力的で、本書を読み進むうえで大きな牽引力になっている。



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錆と人間 (ビール缶から戦艦まで)
ジョナサン・ウォルドマン (著), 三木 直子 (翻訳)
築地書館

9 10

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