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2016年03月30日23:39

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紀尾井 明日への扉11 藤元高輝(ギター)

若手や新進気鋭の新人の登竜門ともいうべき、紀尾井ホールの「明日への扉」シリーズ。

今回は、クラシック・ギター久々の大型新人との呼び声が高い藤元高輝の登場。

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あの村治佳織の実父である村治昇氏の下で早期英才教育を受け、早くも小学生の時から将来を嘱望され、ジュニアの時代から数々のコンクールを総なめにするなど華々しい活躍を続けてきました。2011年の東京国際ギターコンクールではアメリカ・ギター財団による国際コンクールの覇者フローリアン・ラルースを抑えて1位となっています。東京音楽大学付属高等学校、東京音楽大学にて荘村清志、江間常夫の各氏に師事するかたわら作曲や指揮も学んでいるとか。昨年秋からはケルン音楽大学でも学んでいる。

プログラムは、ダウランドやスカルラッティのような古楽・バロックから、ソル、タレガといったクラシックギターの古典やファリャ、ヴィラロボスといった現代ギターの泰斗、ラヴェルの名曲を自身が編曲したものに加えて、日本人作曲家に自身が委嘱した新曲まで実に多彩で全く新人離れしたもの。

クラシックギターは、例えそれがいわゆる《クラシック音楽》という正統派であっても、妖しいまでの情感や狂おしいまでの魔性をたたえた情熱的で激しいものまで多彩なスタイルを秘めているけれど、藤元のギターは実に繊細で清らか、怜悧な知性を感じさせるものです。

そういう藤元のギターを最もよく感じさせたのは、自身が編曲したラヴェルの「道化師の朝の歌」でした。原曲はピアノであれ、それを作曲者が編曲した管弦楽版であれ、大変なヴィルティオーゾチックな難曲で、その大音響と扇情的なリズムがふっと頭のそこかしこに浮かび上がってきますが、藤元のギターはあくまでも複雑精妙で、どれほど高度な演奏技巧を駆使していても実に霊妙であって氷のように冷静極まりない。

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私たちの席は、800席ほどの紀尾井ホールのステージから12列目で、いっさいSR類を使わないアコースティックなクラシックギターでは難しいかとも思ったのですが、細部まで実によく聴き取れます。むしろ、オーディオなどでは胴の共鳴などを強調しがちですが、むしろ附帯音がないすっきりとした響きで繊細なナイロン弦の変幻精妙な音色やフラジオレットがとても美しく、その音の通りの良さは意外な気がしました。実は、私の通路を隔てたすぐの右隣には荘村清志氏がお座りでちょっと緊張してしまいましたが、なるほどこの12列目であっても特上席なのだと納得しました。

4人の作曲家の皆さんが客席に招待されているので、会場はいつもとはちょっと違う雰囲気がありました。そこかしこで挨拶が交わされる内輪とか身内の感覚があって、それでいていわゆる「発表会」的な華やかさとは無縁のちょっと重めの知的な雰囲気です。作曲者の皆さんはそれぞれの曲の演奏が終わった後に紹介され喝采を受けるのですが、なかでもこの日が初演となった《crypte XV》の作曲者・木下正道さんはステージに呼ばれて、演奏者としばしのトーク。これが絶妙で、いつも父親の遺品のちゃぶ台で作曲の仕事をしているとか、曲の内容紹介を向けられて「うんと静かな曲とすご〜くうるさい曲が交代交代になんです」という説明と、実際の難解な曲とのギャップに会場は笑いで盛り上がりました。

アンコールでは、武満徹のギター曲が2曲。これがラヴェル以上に藤元らしい感性の世界を感じさせる演奏で、同時に武満のギター曲というほんとうにユニークな美しさを湛えた名演でした。




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紀尾井 明日への扉第11回
藤元高輝(ギター)

2016年3月25日(金) 19:00
東京・四ッ谷 紀尾井ホール


ダウランド:ファンシー P6
ソル:『魔笛』の主題による変奏曲 Op.9
スカルラッティ/フィスク:ソナタ イ長調 K.322
タルレガ:ロシータ
伊左治直:熱帯伯爵
ラヴェル/藤元高輝:道化師の朝の歌
川上 統:ジェネット、ペーシュカショーロ(演奏者委嘱・再演)
植田 彰:アルクトゥルス国際バレエ団の困惑(演奏委嘱・再演)
タルレガ:メヌエット
スカルラッティ/フィスク:ソナタ イ短調 K.175
ファリャ:ドビュッシーの墓に捧げる讃歌
ヴィラロボス:12の練習曲より第1番 ホ短調、第2番 イ長調、第3番 ニ長調 NAXOS
木下正道:crypte XV(演奏者委嘱・初演)

(アンコール)
リード&メイソン/武満徹:ラスト・ワルツ
武満徹:すべては薄明のなかで 第4曲

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